和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

「歩く観光客」続々 共通巡礼の達成6千人超、熊野とサンティアゴ

共通巡礼手帳とパンフレット
共通巡礼手帳とパンフレット
共通巡礼達成者
共通巡礼達成者
 世界遺産の「熊野古道」と「サンティアゴ巡礼道」(スペイン)の両方を歩いた「共通巡礼」の達成者が急増している。今年は5月末までに千人を超え、過去最多を上回るペース。10年目で通算6千人を突破した。熊野古道に世界各地から「歩く観光客」が続々と訪れている。


 「共通巡礼」は、和歌山県田辺市とスペイン・ガリシア州にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラ市との共同事業。ともに千年以上の歴史がある世界遺産の巡礼道を有する縁で、2014年に観光交流協定を結んだ。「二つの道の巡礼者」を増やそうと、15年から共通巡礼手帳を発行し、達成者を登録している。

 15年の年間達成者は146人で、その後年々増加。コロナ前の19年は1387人が登録された。コロナの影響で、20~22年は減少したものの、23年は過去最多の1739人。24年は5月末時点で1052人と23年同期の1・7倍いる。

 サンティアゴ巡礼道は、サンティアゴ大聖堂を中心に、巡礼をサポートするネットワークがあり、世界的にも知名度が高い。過去にサンティアゴ巡礼を達成した旅行者に「共通巡礼達成」という新たな価値を提示したことで、熊野古道を訪れる人が増えたという。

 登録者の国・地域別では日本が1508人で最も多く、オーストラリア933人、アメリカ924人と続く。トップ10にはスペイン、イタリア、イギリス、カナダなど欧米が並ぶ。

 一方で、アジアでの注目も高まっており、4位は台湾、6位に中国、10位にシンガボールが入る。欧米豪を中心とした誘客を展開してきた田辺市熊野ツーリズムビューローは「アジアでも旅行形態が団体、個人から目的主体に変わってきているのかもしれない」とさらなる増加に期待する。

 世界中の人が、なぜ「歩く旅」に引かれるのか。「共通巡礼」の達成者で、田辺市本宮町で熊野古道客の荷物搬送サービスを手がける鳥居泰治さん(65)は、今年3月に3度目のサンティアゴ巡礼を経験した。

 「巡礼に行く理由を言葉で表現するのは難しい。金もかかるし、しんどい。でも、巡礼者同士が『ブエン・カミーノ(良い巡礼を)』のあいさつを交わし、言葉が通じなくても交流できる。独特の雰囲気があって、また行きたくなる。2年後に4回目の巡礼を計画している」と笑った。