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2024年12月22日(日)

チョウザメの全雌化に初成功 大豆イソフラボン使い近畿大学

近畿大学水産研究所新宮実験場で飼育研究しているコチョウザメ(和歌山県の新宮実験場提供)
近畿大学水産研究所新宮実験場で飼育研究しているコチョウザメ(和歌山県の新宮実験場提供)
 近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)の稲野俊直准教授の研究グループは、大豆イソフラボンを使ったチョウザメの全雌化に、日本で初めて成功した。大豆イソフラボンを含んだ飼料を与えるだけで雌化できるため、実用化できれば養殖で課題になっているキャビア(卵の塩漬け)の生産効率の悪さを解決できると期待している。

 今回の実験ではコチョウザメを使った。東ヨーロッパからロシアなどに広く分布する。最大で全長1・3メートルほどの小形のチョウザメ。成熟が早く体重が1キロに達する3歳ごろから卵を持つ。体に合わせてキャビアも小粒だがナッツの風味が特徴的で「スターレット」と呼ばれ珍重されている。

 普通に飼育すると雌雄は半分ずつになることから、効率化を図るため、雌だけに養殖する技術開発に取り組んでいる。女性ホルモンで魚が雌化することはこれまでの研究で確認できているが、国は食用魚に使うことを認めていない。そこで、サプリメントとして市販され、生物の体内で女性ホルモンと同様の作用を持つ大豆イソフラボンに着目。2021年5月から大豆イソフラボンの一種ゲニステインを使った実験を続けてきた。

 実験では、ふ化後2カ月の稚魚にゲニステインを含んだ飼料を180日間与えた。4グループに分け、三つは含有量を変え、一つは女性ホルモンを与えた。その後一般的な飼料で70日飼育している。その結果、含有量が1グラム当たり千マイクログラムのグループで全ての個体が卵巣を持っていることが分かった。女性ホルモンのグループは約7割が卵巣を持っていた。

 研究グループは「今後、実用化に向けて、ゲニステインの適量を探り、より扱いやすい大豆を由来とする原料を使った飼料で雌化に取り組む」と話している。