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ヒロメで「里海」づくり 田辺の新庄漁協、環境省がモデル事業に

田辺湾で育ったヒロメ
田辺湾で育ったヒロメ
 海藻のヒロメ養殖を通じて環境保全と地域振興の循環を目指す田辺市の新庄漁協(橘智史組合長)の取り組みが、環境省の「令和の里海づくり」モデル事業に選ばれた。ヒロメの種苗生産、養殖試験、商品開発、体験ツアー開発の4事業を柱に進める。


 「令和の里海づくり」は地域と連携して藻場・干潟の保全・再生と地域資源の活用を進める事業が対象。本年度は新庄漁協を含め全国10団体が選ばれた。

 同漁協によると、ヒロメは生育海域が限られる。県内では田辺湾周辺のほか、串本町から新宮市にかけ点在する程度で生産量は少ない。養殖の生産力を高めるため、種苗生産方法の再検討や藻場の造成に取り組んできた。

 生産量増大とともに市場の拡大も課題となっている。地元では生で出荷されることが多く、販路が限られている。そこで、地元の高校と連携し、加工品開発にも取り組む。まちづくり会社を通じた販売や宣伝活動も計画している。加工では1次産業に関心のある就労支援事業所との連携も視野に入れている。

 養殖海域は、吉野熊野国立公園の海域公園地区に含まれている。これを生かし、ヒロメの養殖や収穫体験を通じて海の環境や海藻について学べる体験ツアーも企画。自然環境の保全に興味を持つきっかけにしてもらいたいという。

 同漁協は「ヒロメの市場拡大や藻場の保全はもちろん、漁業者の高齢化が進む中、担い手不足を補う関係人口の増加などにもつなげたい」と話している。


【ヒロメ】 ワカメに近い海藻。田辺湾での収穫は2月中旬から4月中旬で、大きなもので80センチほどに成長する。しゃきしゃきした食感が特徴。地元では「しゃぶしゃぶ」や「酢の物」「すし」などにして食べられる。

 近年は大型海藻であることから、沿岸海域の生態系が二酸化炭素を吸収することで炭素を固定するブルーカーボンの対象種としても注目されている。

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