和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年03月23日(日)

「実現可能性、十分ある」 公立大学構想を検証、和歌山県田辺市

 和歌山県田辺市が一般財団法人から提案を受けている公立大学の設立構想を巡り、市は19日、庁内での検証結果を明らかにした。学生の確保や財政面の課題などについて検討したところ、大学構想の「実現可能性は十分ある」と結論付けた。その上で「専門的見地からさらなる検証が必要である」としている。


 構想は、現役の大学教授らでつくる一般財団法人「立初(たてぞめ)創成大学設立準備財団」(兵庫県宝塚市)が市に提案した。市役所旧庁舎(新屋敷町)を活用し、文系・理系の枠にとらわれずに学ぶ「文理融合型」の大学(定員は1学年144人)を設置したいとしている。

 市が大学の設置主体となり、財団メンバーらで構成する公立大学法人が運営を担う構想。市が設置する公立大学とすることで、国からの財政支援を受けることができるという。

 この日、市議会「庁舎跡地活用等まちづくり特別委員会」の会合があり、市当局が検証結果を報告した。

 学生の確保については、経済的な理由で進学を諦める学生の受け皿になる可能性があるほか、地方における公立大学がいずれも定員数を確保していること、公立大学であるため授業料が抑えられることなどを総合的に勘案し、可能であるとした。

 財政面では、耐震補強を含む施設整備費などの初期費用を約50億円と概算した。このうち、国の支援事業や企業版ふるさと納税寄付金などを除いた市の実質負担額は、約18億5千万円と見込んでいる。

 運営収支については、学生の充足率を100%として試算。開学2年目までは在学生が少ないため授業料や運営交付金などの収入も少ないが、3年目以降は単年収支で黒字を見込むとしている。

 津波浸水域にある旧庁舎を活用することについては、地震発生時に速やかに上階へ避難できるよう垂直避難を考慮した施設整備を行うことが必要であると言及。大学施設が津波避難ビルの役割も果たし、学生だけでなく周辺住民や観光客の安全性向上にもつなげることが求められるとしている。

 旧庁舎跡地を含む田辺湾岸エリアのまちづくりを巡っては、市が昨年3月、「田辺ONE(ワン)未来デザイン」構想を策定している。この構想との整合性については、まちのにぎわい創出や地元経済の活性化、人材育成など、大学設置によって見込まれる効果と方向性が合致しているとした。

 委員からは「学生が集まるという根拠が乏しいのではないか」「今後、より詳細な検証をする上では、広く市民を交えて丁寧に議論してほしい」などの意見や要望が出た。