和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年02月26日(水)

手揉み製茶が国文化財 和歌山県内唯一の技術継承者、上村さん「今後の励み」

さまざまな手使いで茶葉に圧力を加え、内部の水分を排出する上村誠さん(和歌山県白浜町市鹿野で)
さまざまな手使いで茶葉に圧力を加え、内部の水分を排出する上村誠さん(和歌山県白浜町市鹿野で)
 約300年の歴史がある「手揉(も)み製茶」の技術が昨年12月、国の登録無形文化財に登録され、「手もみ製茶技術保存会」(事務局・静岡市)が保持団体に認定された。和歌山県内で唯一の会員、上村誠さん(76)=白浜町市鹿野=は「技術を認めてもらえたことはとてもうれしい」と喜んでいる。


 登録無形文化財は、長い歴史の中で人々が守り伝えてきた技術を次世代に引き継ぐことなどを目的に、2021年に創設された制度。「書道」「伝統的酒造り」「菓銘をもつ生菓子(ねりきり・こなし)」「京料理」に続き、今回「手揉み製茶」と「華道」が加わり6件となった。

 手もみ製茶技術保存会は、高い技術者を認定する「茶匠(さしょう)」(16人)と「師範」(53人)の資格を持つ計69人(昨年12月末現在)の会員で構成されている。上村さんは「茶匠」。 

 「手揉み製茶」は、茶種の一つ煎茶、かぶせ茶または玉露を手作業で作り上げる伝統的な技術。製茶作業には、焙炉(ほいろ)と呼ばれる乾燥炉と、茶葉を上にのせて熱を伝える和紙を張った道具・助炭(じょたん)などを使う。

 さまざまな手使いで茶葉に圧力を加えながら、内部の水分を排出し、針のような細長い形状に整えて完成させる。この技術は1738年に京都で生まれ、約100年後に静岡に伝わったという。

 「手揉み製茶」の味は、機械では出せない濃いうま味が特長。市場にはほとんど出ていない。

 上村さんが生まれ育った市鹿野地区は、江戸初期から茶の産地として知られている。現在は高齢化と後継者不足により、生産農家が減少している。上村さんは地区に根付いている茶栽培の文化を絶やさないようにと特産品「川添茶」の栽培などに取り組んでいる。

 今回の登録について上村さんは「このように登録されるとは考えたこともなかった。今後の励みになる」と話している。