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2024年09月17日(火)

【詳報・動画】ロケット打ち上げ、12月に再挑戦へ 和歌山県串本の発射場

民間小型ロケット「カイロス」2号機の打ち上げ時期について説明するスペースワンの遠藤守取締役(25日、和歌山県串本町サンゴ台で)
民間小型ロケット「カイロス」2号機の打ち上げ時期について説明するスペースワンの遠藤守取締役(25日、和歌山県串本町サンゴ台で)
打ち上げ直後に爆発した小型ロケット(24年3月13日、和歌山県那智勝浦町で)
打ち上げ直後に爆発した小型ロケット(24年3月13日、和歌山県那智勝浦町で)
 和歌山県串本町田原の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」を運営する「スペースワン」(東京都)は25日、小型ロケット「KAIROS(カイロス)」について、12月に2号機を打ち上げるための準備を進めていると明らかにした。初号機が打ち上げ直後に爆発した原因が特定できたとし「2号機の打ち上げは可能」と判断した。


 町内のホテルで開かれた「宇宙シンポジウムin串本」で、スペースワンの遠藤守取締役が現状報告として説明した。

 カイロスは固体燃料3段式のロケットで、全長は約18メートル。3月13日に打ち上げた初号機は、打ち上げ約5秒後に飛行中断措置が発動して空中で爆発した。

 遠藤取締役は原因について、打ち上げ前の予測よりも第1段の推力が低く、速度が不足していたため、カイロスに搭載されている「自律飛行安全システム」が稼働したと説明した。

 その理由として、推進薬の燃焼速度の計測プロセスに問題があり、計画では実際よりも高めに予測していた▽自律飛行安全システムを国内で初めて適用するため飛行正常範囲を厳しく設定していた―の2点を挙げた。「高めに予測したという原因が分かったので、それは見直した。安全の範囲内で正常な飛行範囲も広げるために設定を見直す。以上のことから今回起きたような事象は解消できると考えており、2号機の打ち上げは可能という結論になった」と述べた。

 その上で「目標としては12月に打ち上げることで準備を進めている。まだまだ具体的な日程は関係機関との調整があるので、もうちょっと時間を頂きたい」と述べた。

 同社は同日、豊田正和社長らがオンラインで記者会見を開いた。

 初号機では搭載した人工衛星は1機だったが、2号機では5機を搭載して軌道に投入する計画だと説明。具体的な打ち上げの日時については、2カ月前に公表するとした。豊田社長は「全身全霊を尽くして2号機のミッション達成に向けて対応したい」と話した。


■「機運盛り上げる」 串本町長

 串本町の田嶋勝正町長は「年内の打ち上げが発表され本当にうれしい。機運を盛り上げるとともに、行政として交通整理や安全確保などを徹底したい」、那智勝浦町の堀順一郎町長も「大変喜ばしい。地元の方々は次の発射を待ちわびているので、やっとかという感じで喜んでいただけると思う。3月で出た打ち上げの見学に関する課題は町を挙げて協力を求めながら改善していく。必ず目的が達成される発射にしてもらいたい」と話していた。

 県成長産業推進課によると、今後、県や地元自治体などでつくる「スペースポート紀伊周辺地域協議会」などで議論をする必要はあるが、基本的に前回と同様、渋滞対策を取りながらチケット制の見学会を開く方針。

■知事「成功に期待」

 岸本周平知事は26日の定例記者会見で「県としては大歓迎をしている」と話した。「(発表では)前回の打ち上げに対する改善点の説明もあり、かなりの確率で成功していただけるのではないかと期待も高まっている」とした。

 県としては、厳重な渋滞対策や、警戒区域への進入禁止についての広報を強化するなど「前回のことをベースにしながら、しっかりと改善していきたい」と話した。