和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月27日(水)

「熊楠賞」奈良女子大の松岡氏 「妊娠・出産」を民俗学や文化人類学の立場から研究、和歌山

松岡悦子氏(和歌山県田辺市提供)
松岡悦子氏(和歌山県田辺市提供)
 世界的な博物学者、南方熊楠(1867~1941)にちなみ、民俗学や博物学で業績のある研究者に贈る第34回「南方熊楠賞」に、奈良女子大学名誉教授の松岡悦子氏(70)=兵庫県芦屋市=が決まった。妊娠・出産について、民俗学や文化人類学の立場から研究。アジアやヨーロッパでもフィールドワークを重ね、さまざまな分野の研究誌に論文を発表してきた。

 主催する和歌山県田辺市と南方熊楠顕彰会(会長=真砂充敏市長)が28日、発表した。

 選考委員会によると、松岡氏は妊娠・出産について、これまでの民俗学的研究を継承しつつ、家族やジェンダーの問題として取り上げた。バングラデシュやインドネシア、ドイツ、ハンガリーなど世界各地の病院で出産現場を確認。医療化にはらむ問題を、国際的な比較を通じて論じてきた。

 著書のほかに論文も多く、看護学や助産学、社会学など多様な分野の研究誌に掲載。小松和彦・選考委員長(国際日本文化研究センター名誉教授)は「松岡氏の研究は、民俗学の現代的展開として、南方熊楠賞にふさわしい」としている。

 松岡氏は「これを機に『妊娠・出産』というテーマに焦点が当てられ、妊娠・出産・育児を女性の視点から捉え、政策立案がなされるきっかけになってほしいと期待する」とコメントしている。

 南方熊楠賞は1990年に制定。例年、人文部門と自然科学部門から交互に選考している。松岡氏の受賞は37人目。



 授賞式と記念講演が5月11日午後1時半から、田辺市新屋敷町の紀南文化会館である。記念講演の演題は「妊娠・出産でつながる人と社会」。定員は先着200人。託児サービスや手話通訳もある(4月26日までに申し込みが必要)。

 問い合わせは、南方熊楠顕彰館内の顕彰会事務局(0739・26・9909)へ。


 松岡悦子(まつおか・えつこ)氏 1954年、大阪府生まれ。83年、大阪大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。ロンドン大学ユニバーシティカレッジ名誉研究員などを経て、2008年に奈良女子大学生活環境学部教授となった。19年に定年退職。主な著書に「妊娠と出産の人類学」(世界思想社、14年)などがある。