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2024年12月28日(土)

「彩色絵図」多屋氏の遺稿が本に 江戸-昭和の熊野の名所絵図に色づけ、和歌山

「追憶の多屋朋三氏 遺稿『彩色絵図』熊野川 新宮 那智 勝浦 古座」
「追憶の多屋朋三氏 遺稿『彩色絵図』熊野川 新宮 那智 勝浦 古座」
 郷土資料を収集し、それらを基にした復刻版を刊行してきたことなどで2020年に田辺市文化賞を受賞した、あおい書店(和歌山県田辺市湊)元店主、故・多屋朋三氏が残した原稿などをまとめた本「追憶の多屋朋三氏 遺稿『彩色絵図』熊野川 新宮 那智 勝浦 古座」(縦18センチ、横26センチ)が出版された。同書店と荒尾成文堂(新宮市千穂2丁目)で販売している。150部限定。155ページ。税込み千円。

 多屋氏は昨年10月、77歳で亡くなった。生前、江戸時代などに刊行された単色の名所絵図をもっと分かりやすく紹介したいとパソコンで色をつけ、4冊の本を刊行していた。

 今回出版した本は、完成間近となっていたが、病気で作業を中断したため、発表されず残されていた原稿を、本の解説を担当していた中国文学研究者、久保卓哉さん(76)=白浜町=がまとめた。

 絵図の場所を示す地図、多屋氏との思い出をつづった友人ら9人の追悼文、あおい書店刊行書籍目録などを加え、約10カ月かけて完成させた。

 本には、神倉神社(新宮市)、いかだ流し(北山村)、那智の滝(那智勝浦町)、鯨漁(太地町)、橋杭岩(串本町)、一枚岩(古座川町)など、江戸―昭和に描かれた絵図78枚を掲載している。

 久保さんは「多屋さんの優れた業績を多くの人に知ってもらいたいと思い出版した。熊野古道の熊野川など、江戸時代などの景色と現在の景色を見比べて楽しんでもらいたい」と話している。