和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

【動画】「串本町の木」キンカン出荷始まる 紀伊大島樫野地区

農家から出荷されたキンカン(3日、和歌山県串本町樫野で)
農家から出荷されたキンカン(3日、和歌山県串本町樫野で)
産地支援の一環で新たにキンカンの栽培も始めた青木寛さん(2日、和歌山県串本町樫野で)
産地支援の一環で新たにキンカンの栽培も始めた青木寛さん(2日、和歌山県串本町樫野で)
 和歌山県串本町の「町の木」で、紀伊大島の樫野地区で栽培されているキンカンの出荷が3日から始まった。紀伊大島のキンカン栽培は100年以上の歴史があるとされ、以前は多くの人が携わっていたが、高齢化などの影響でJA紀南に出荷している農家は現在5戸に減少。そんな中、新たに栽培に挑戦するなど、栽培の歴史を守ろうという動きもある。


 JA紀南串本支所によると、太平洋に面して温暖な紀伊大島はキンカン栽培の適地。以前は島内各地で100戸以上が栽培していたといわれるが、現在は樫野地区の5戸だけになった。

 各農家は、美しく色づいた直径2・5~3・5センチほどの果実をサイズごとに分けて出荷し、JAで秀品や優品などに選別。JAは常連客に直接販売したり、JA紀南管内の直売所やAコープに並べたりしている。

 今年の出荷初日、樫野地区にあるJAの集荷場に各農家から集まった果実は約300キロ。収穫のピークは2月中旬からで、今季は約4トンを見込んでいる。収穫は3月いっぱい続く見通しという。

 生産者の永田恵さん(51)=串本町樫野=は「樫野地区のキンカンは甘みだけでなく、程よい酸味と苦みがある。今年は霜や雪で実が傷み、収穫量が例年よりも1割ほど減りそう。まるごと頬張ったり、ジャムにしたりして食べていただければうれしい」と話していた。


■新たに栽培も挑戦 産地支援の青木さん

 同町で観光や飲食事業を営む青木寛さん(54)=串本町串本=は「存続の危機にある産地を守りたい」と、規格外のキンカンの果実を使い、ソフトクリームの原料となるピューレやジュースにする加工事業を昨年から開始。今年1月からは農家が手放した畑を借り、キンカン栽培にも取り組み始めた。

 畑には20本ほどキンカンが植わっている。生い茂っていた下草を刈るなどして整備しており、2日から、自然に実っていた果実も収穫。加工事業に活用するという。

 青木さんは加工事業の売り上げの1割をキンカン農家の支援に使うことにしており、昨年分の寄付額を同JAの串本金柑部会の副部会長である永田さんに報告した。

 青木さんは「県外から移住して長年お世話になっている樫野の方々への恩返しのつもりで取り組んでいる。樫野はトルコとの歴史があるし、1次産業から3次産業までポテンシャルのある場所。キンカン栽培の歴史が途絶えないよう少しでもお手伝いできれば」と話している。