和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

南海トラフでひずみ蓄積 ジオパークセンターで専門家講演

約50人が参加した南紀熊野ジオパークセンターの講演会(和歌山県串本町潮岬で)
約50人が参加した南紀熊野ジオパークセンターの講演会(和歌山県串本町潮岬で)
 地震動を伴わないスロー地震と海溝型巨大地震との関係についての講演会が16日、和歌山県串本町であった。国立研究開発法人建築研究所の北佐枝子国際地震工学センター主任研究員が、海溝などから沈み込んだ海洋性プレート内で発生するスラブ内地震とスロー地震の関係を調べ、南海トラフの想定震源域でひずみが蓄積している仕組みを見いだすことができたと述べた。

 南紀熊野ジオパークセンター(串本町潮岬)が定期的に開催している講演会。同センターと各分野の研究者が参加する団体「Slow―to―Fast地震学」が「スロー地震とスラブ内地震と海溝型巨大地震」のテーマで共催し、約50人が参加した。

 北さんは日本列島では内陸、海溝型、スラブ内など揺れが瞬間的な4タイプの地震の他、スロー地震が起きていると紹介。スロー地震が最近の研究で海溝型巨大地震の準備過程の一つと分かり、紀伊半島から九州にかけての境界でも2002年ごろ見つかったと述べた。

 北さんはスラブ内地震が、スロー地震と起きるタイミングが連動しているのではという十数年前の研究発表を受け、「専門とするスラブ内地震を使ってスロー地震を研究すれば、スラブ内地震で海溝型巨大地震の準備過程を見ることができるのでは」と考え、10年ほど前に研究に着手した。

 紀伊半島は深部低周波微動とスロースリップの2タイプのスロー地震が発生する地域と述べ、半年周期でこの二つのタイプのスロー地震が同時発生するのが紀伊半島のスロー地震活動の特徴だと説明した。

 スラブ内地震の複数の活動指標が、スロー地震の発生するタイミングの前後で変化していることを発見。温泉などの地殻流体が、スラブ内からスロー地震が起きるプレート境界へ移動していることが原因と述べた。スラブ地震が起きた後、それよりも浅い南海トラフの想定震源域との間の領域でスロー地震が起き、南海トラフの想定震源域でひずみがどんどん蓄積している様子も見いだせたと述べた。