和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月21日(土)

熊野古道・大辺路を学び歩く 串本町で世界遺産交流会

世界遺産に登録されている熊野古道大辺路「飛渡谷道」で、新調された木橋の上を歩く交流会の参加者(和歌山県串本町田並で)
世界遺産に登録されている熊野古道大辺路「飛渡谷道」で、新調された木橋の上を歩く交流会の参加者(和歌山県串本町田並で)
多くの語り部が参加した「わかやま世界遺産地域交流会」(8日、和歌山県串本町串本で)
多くの語り部が参加した「わかやま世界遺産地域交流会」(8日、和歌山県串本町串本で)
 和歌山県串本町で8日、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の語り部や保全活動に各地で取り組んでいる人たちが集う、保存活用団体連携促進研修事業「わかやま世界遺産地域交流会」が開かれた。約120人が参加し、地元「熊野古道大辺路刈り開き隊」の上野一夫隊長(74)=串本町中湊=の講演を聴いた後、同隊メンバーの案内で、2016年に世界遺産に追加登録された同町田並の大辺路「飛渡谷道」などを歩いた。

 県世界遺産センター(田辺市本宮町)によると、この交流会は県世界遺産協議会の主催で、普段活動している地域だけでなく、他の地域や参詣道全体についての理解や団体相互の交流を深めることが目的。06年度に始まり毎年開いているが、串本町での開催は初めて。県内各地の他、三重県南部からも語り部が参加した。

 この日の交流会は同町串本の町文化センターで午前中から始まり、県世界遺産センターの山西毅治所長が「世界的なガイドブックなどで、和歌山県の評価がすごく高まってきている。大きな要因が二つあり、地域の力とその魅力をいかに伝えるか、ということ。皆さんはその二つの面でご活躍いただいており、ありがたい。地域を観光客に直接ご案内していただける皆さんの力が最も大切で、今日を契機にさらにパワーアップを」とあいさつ。串本町教育委員会の濵地弘貴教育次長も「今日は交流をしていだき、地域の魅力を感じていただけたら」などと述べた。

 上野隊長は「大辺路を通った旅人たち」と題して講演した。南紀熊野ジオパークのガイドでもある上野隊長は地質的な面から紀伊半島の成り立ちを解説した他、刈り開き隊による保全活動やガイドの様子、どのような人たちが大辺路を旅したかを古文書などに基づいて説明。「大辺路は海岸沿いを通るのが特徴で、いろんな楽しみ方ができる。今日はショートコースだが、ぜひ大辺路の全コースを歩いてみて、いろんな魅力を発見してほしい」などと参加者に呼びかけた。

 午後からは現地学習として、刈り開き隊メンバーの案内で大辺路を体験した。参加者は同町田並にある田並公民館前を出発。杉木立の中を谷川に沿って道が続き、照葉樹林とこけむした石畳道が残る飛渡谷道などを経て、同町有田の有田漁港までの約3キロを歩いた。

 紀の川市から参加した高野七口再生保存会事務局長の児玉康宏さん(70)は「大辺路は昔歩いたことはあるが、飛渡谷道はおそらく初めて。紀北の参詣道とはひと味違って面白いし、石畳などが良好に保全されていると感じた」と話していた。