和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

仮想空間にまち再現 和歌山県田辺市、災害対応や施設管理に活用

デジタルツインで表した田辺市役所(中央)。屋上の状況も詳しく分かる=和歌山県田辺市提供
デジタルツインで表した田辺市役所(中央)。屋上の状況も詳しく分かる=和歌山県田辺市提供
 和歌山県田辺市は、仮想空間に現実のまちを再現する最新技術「デジタルツイン」の構築に乗り出す。高性能のドローンで撮影した画像データなどを基に、地形や道路網、建物の状況などを3次元化し、災害対応や公共施設の管理、観光PRなど、さまざまな分野で活用する方針だ。人員やコストの削減を図るとともに、地域の魅力発信にもつなげたいという。


 国のデジタル田園都市国家構想推進交付金の採択を受け、ドローン購入費など2437万円を本年度一般会計補正予算案に盛り込んだ。15日開会の6月市議会に提案する。

 デジタルツインは、ドローン画像などさまざまなデータを集めて現実そっくりの空間をコンピューター上に作成。ネットワークを通じて共有し、分析やシミュレーションに活用することができる。

 購入予定のドローンは8台で、本庁舎や消防のほか、4行政局にも配備する。レーザー測量が可能なものや、赤外線カメラ付きのものも含む。

 活用の場面は多岐にわたる。

 例えば、山間部で土砂崩れが発生した場合。行政局職員がドローンで空撮した現場の画像を共有サーバーに取り入れて3D化し、本庁舎の職員がすぐに確認することができる。早期に被害状況が把握でき、復旧活動に役立てることができるという。

 ドローンそのものは、現在も、公共施設の老朽化調査など一部の業務で活用している。市建築課の担当者は「地上からの目視では確認が難しい屋根や外壁などの状況も詳しく把握できる。調査費用や人員の軽減、期間の短縮、安全性確保など、大きな効果を実感している」と話す。

 デジタルツインを導入することで、そういった効果をさらに高めることが期待できる。全庁的に周知を図り、世界遺産熊野古道をはじめとする文化資源の保全、建設事業に当たってのシミュレーションなど、あらゆる用途で活用していきたいという。

 担当者は「人口が少なくなる中、デジタルツインを活用することで従来の業務の流れを見直し、人員やコストの削減にもつなげることができる。市域が広く、世界遺産をはじめとする多くの資源を有する田辺市にとって、とても有効な取り組みだと思う」と話している。

■15日に市議会開会

 田辺市議会6月定例会は15日に開会する。会期は7月6日までの22日間。市は、1億7006万円を増額する2022年度一般会計補正予算案(補正後427億5954万円)など19件を提出する。