和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

田辺湾の魅力を一つにつなぐ 田辺市が「未来構想」へ

田辺湾の地図
田辺湾の地図
 和歌山県田辺市が2022年から、「田辺湾未来構想」(仮称)に着手する。市庁舎移転後の跡地利用を構想の中核に位置づけ、田辺湾の魅力を最大限に活用したまちづくりを図る。すでに、湾岸を巡る道路整備や天神崎から鳥ノ巣半島にまたがる自然資源の活用調査を始めており、扇ケ浜の価値向上、紀南文化会館の大規模改修、水産業の活性化も一体で進めたいという。


 田辺湾には天神崎、元島、扇ケ浜、神島、鳥ノ巣半島など数多くの自然資源がある。市はその価値を再認識し、教育旅行やエコツーリズムでの活用を想定して21年度に専門委員会を発足させた。すでに地質や生物、歴史・文化など各分野の学識経験者らが調査を始めている。

 とりわけ扇ケ浜には、アウトドアスポットとして大きな可能性があると考えている。これまでも海水浴場や多目的広場を整備してきたが、将来的に不足している機能や求められる要素は何か、中心市街地の他のゾーンと絡めて人の流れをどうつくるかなど、さまざまな視点から価値を高めたいという。

 道路の整備も動き始めた。神島台交差点から文里湾をまたぎ、県道文里湊線に接続する架橋を含めた文里湾横断道路は、県が20年度に事業に着手し、現在は詳細設計を進めている。

 完成時期は未定だが、開通すれば、未整備区間の改良を計画している市道目良線(上の山2丁目―目良)と合わせ、田辺湾岸が一本のルートでつながる。白浜―田辺間の従来のルート、高速道路やバイパス道路と比べ、湾岸の景観を眺めながら走ることができ、観光面でも大きな可能性を生み出すとみている。

 湾岸資源の中心に位置する市庁舎は、扇ケ浜や武道館などアウトドアやスポーツを楽しめるゾーン、紀南の文化芸術の拠点である紀南文化会館に隣接している。しかし、紀南文化会館も築40年近くなっており、大規模な改修に迫られている。

 市庁舎が移転した跡地を活用するには、こうした周辺一帯の環境をどう生かすかの議論が必要になる。市は21年1月から副市長をトップに本庁舎跡地利活用検討委員会を設置し、課題を整理してきた。22年には庁内体制を再構築。市長をトップに据えて田辺湾未来構想の推進本部を設置する。

 庁舎跡地の活用については、幅広い住民に意見を求め、民間活力の導入も視野に入れる。扇ケ浜の具体的な活用についても民間事業者の活用を検討する。

 真砂充敏市長は「豊かな資源を一つに結び、田辺らしいまちづくりを進めたい。行政だけでは無理であり、民間の力を積極的に取り入れたい」と話している。