和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月20日(金)

小型ロケットの模型寄贈 造形作家の石田さんが串本町に

小型ロケットの模型を制作して寄贈した石田貴志さん(左)と田嶋勝正町長=29日、和歌山県串本町串本で
小型ロケットの模型を制作して寄贈した石田貴志さん(左)と田嶋勝正町長=29日、和歌山県串本町串本で
 和歌山県田辺市中辺路町西谷の造形作家、石田貴志さん(46)が串本町田原にできる日本初の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げられる小型ロケット「カイロス(KAIROS)」の模型を制作し、29日、串本町に贈った。ロケット部分は高さ約1・7メートルで、実物(約18メートル)の10分の1ほどの大きさ。発射の瞬間をイメージしており、石田さんは「ロケットは紀南活性化の大きなチャンス。機運盛り上げの一助になれれば」と話している。


 石田さんは堺市出身。東京都にある武蔵野美術大学造形学部を卒業後、美術造形会社に就職し、アトラクション遊具や大型テーマパークの立体造形物の制作などに携わった。

 田辺市には環境に引かれて2013年春に移り住み、空き家を自分で改築して美術造形工房「BAS Fronti(バス フロンティ)」を開設した。16年に同市中辺路町近露の「道の駅熊野古道中辺路」にある高さ約190センチの牛馬童子像のモニュメントを制作したほか、19年には那智勝浦町の「勝浦漁港にぎわい市場」で展示されている、同漁港で水揚げされた過去最大のクロマグロを基に制作した実物大のモニュメントを手掛けるなど紀南地方の各地で活動。今回は「紀南の活性化につながるロケット事業に関わりたい」との思いから、模型を作って町に寄贈することにしたという。

 制作は9月中旬からスタート。発射場は周囲が山に囲まれて直接見ることができないため「多くの人に打ち上げの瞬間をイメージしてもらえたら」と、ロケットとともに噴煙を表現した高さ20~30センチの台座を、塩化ビニル樹脂でできた管や繊維強化プラスチック(FRP)、発泡スチロールなどを材料に作った。デザインについては発射場を運営する「スペースワン」(東京都)が協力。今月25日に完成したばかりという。

 串本町では31日に同町串本の町文化センターで宇宙飛行士の毛利衛さんを招いた講演会があることから、このロケットの模型を来場者に見てもらおうと同センター2階に設置。贈呈式が29日にあり、田嶋勝正町長や石田さんらが模型をお披露目し、田嶋町長は「大変ありがたい。フル活用して機運を盛り上げていきたい」と感謝した。

 石田さんは「串本町に発射場ができロケットが打ち上げられることは、串本だけでなく紀南地方全体が活性化する大きなきっかけになるのは間違いない。10年近く紀南地方で活動させていただいていることの恩返しの意味を含め、少しでも地域の盛り上がりのお役に立つことができればうれしい。この模型を有効に活用していただきたい」と話していた。

 模型は、講演会に合わせて宇宙航空研究開発機構(JAXA)から借りた模型などとともに11月1日まで展示。その後は、同町サンゴ台の町役場入り口近くに展示する予定という。