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「山奥ニート」体験を本に 田辺市大塔地域共生舎の石井さん

「山奥ニート」としての体験を本にした、共生舎の石井新さん(和歌山県田辺市五味で)
「山奥ニート」としての体験を本にした、共生舎の石井新さん(和歌山県田辺市五味で)
 「山奥ニート」やってます―。和歌山県田辺市大塔地域の限界集落で、ニートやひきこもりといった若者の居場所づくりをしているNPO「共生舎」(田辺市五味)の石井新さん(31)が自身の体験などを本に書き、光文社(東京都)から出版された。元々の住民が5人のみという同市五味地区を舞台に、10人を超える若者らが集まるようになった共生舎での生活や思いをつづった。

 共生舎は社会に居場所がない人たちが尊重し合って共に生きていくことを目指して2009年に設立。11年にNPOに認定された。

 当初は同じ大塔地域の面川にある古民家を拠点に活動していたが、15年に、五味地区にある元小学校の建物に拠点を移した。食費や光熱費として月額約2万円を払えば家賃不要で住むことができ、現在は20~40代の男女12人が在籍して共同生活を送っている。

 石井さんは名古屋市出身。大学を中退してひきこもっていた際、インターネットを通じて知り合った同じような境遇の奥谷成さん(30)=東京都出身=から共生舎について教えてもらったことがきっかけで14年、ともに移住して「山奥ニート」になった。

 現在は共生舎の職員だが、給料はない。ブログ広告が主な収入源で、他の住人の多くは梅の収穫やキャンプ場、旅館などの仕事を季節ごとにしながら、共生舎で過ごしているという。

 18年1月に「現代社会が嫌になった人が限界集落に集まれば、新しい村ができる。この生活を本として形にしたい」とツイッターでつぶやいたところ、編集者の目に留まり、その年の春から執筆を開始。大塔地域へ引っ越すまでのいきさつや地域の人との交流、共同生活のエピソード、「山奥ニート」仲間へのインタビュー、自身の結婚、これからの思いなどを2年ほどかけて書き下ろした。

 石井さんは「三川地区の方に応援していただいて僕たちは生活ができている。それが本にできて良かった。村おこしとかは考えていないが、人が住まなくなると集落は一気に森に埋もれてしまう。昔の人たちが開拓して住みやすくしてくれたこの場所を、僕らが住むことで守っていきたい」と話す。

 担当した光文社の編集者・須田奈津妃さん(37)は「現状に閉塞(へいそく)感を感じている方や生きづらさを抱えている方に読んでいただき、別の生き方の選択肢があることを知ったり、思考の枠組みを広げたりするきっかけになればうれしい」と話している。

 「『山奥ニート』やってます。」は四六判ソフトカバー320ページで、価格は1500円(税別)。問い合わせは光文社(03・3942・2241)へ。
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