樹木医「生態系や文化守りたい」 古座川町で地域希少種の「保存林」整備
古座川の支流・小川の最上流、和歌山県古座川町小森川でクマノザクラなど地域の希少種を保存・繁殖する「保存林」を整備する樹木医矢倉寛之さん(41)が、「ビジターセンター」建設の資金協力を呼びかけている。気軽に自然と触れ合え、学べる拠点を設け、生態系や地域文化を守る活動への理解を広める狙いがある。
身近な植物が失われていると感じたのが、活動のきっかけだった。矢倉さんが地域の植物だけで庭を造りたいと、ヤマアジサイを探したが、山を駆け巡って発見できたのは5株だけだった。「人気のあるアジサイでさえ、住民が知らない間に姿を消している」とがくぜんとした。
紀南は固有種の宝庫。小規模な地域絶滅も、種全体の絶滅に直結する。また、ある地域で絶滅しても、県内の他地域に残っているから大丈夫―とはならない。「地域による多様性が失われると、その種は絶滅の危機に直面する」と話す。
保存林ではクマノザクラ、ヤマアジサイ、キイジョウロウホトトギスなどを育てている。本数や植栽面積でなく、地域の生態系を守ることを優先。クマノザクラは町内の文化的価値が高い木を選び、挿し木によるクローン苗を増殖している。万一、親木が倒れても、クローンで復活させられる。保存林は「ノアの箱舟」だという。
外来種の存在は、在来種に遺伝的な悪影響を与える可能性がある。隔離された小森川の環境は、保存林の適地となる。小森川集落は、町内にある矢倉さんの自宅からでも車で約1時間かかる。現地での活動を充実させるため、今年3月に住所を移し、集落唯一の住民となった。
矢倉さんは「サクラの季節だけでなく、年間を通じ何度も小森川に足を運んで、活動に触れてほしい」と話している。
■ビジターセンター建設へ
ビジターセンターでは、矢倉さんが樹木医として活動する中で集めた植物や環境、農業、林業、造園などの専門書や資料、光学顕微鏡などの特別な機材を設置して、一般にも活用してもらう。夏休みの自由研究の手伝いや生涯学習の支援もしたいという。イベント「小森川サクラ祭り」や地域の伝統神事「鯛釣り祭り」では、休憩場所にもなる。
2020年に着工し、基礎コンクリートの工事は完了しているものの、建築資材の不足と価格高騰もあり、21年夏から中断していた。近く建設を再開する。
ただ、補助金などの公的な支援はなく、全て自己資金で賄う必要がある。基本設備を整える来年3月までで350万円、トイレやまきストーブ、外構など「フル装備」で完成するまでに1千万円が必要という。
活動支援の方法については、矢倉さんが代表理事を務める一般社団法人「樹木医甚兵衛」のホームページや交流サイト(SNS)で確認できる。
身近な植物が失われていると感じたのが、活動のきっかけだった。矢倉さんが地域の植物だけで庭を造りたいと、ヤマアジサイを探したが、山を駆け巡って発見できたのは5株だけだった。「人気のあるアジサイでさえ、住民が知らない間に姿を消している」とがくぜんとした。
紀南は固有種の宝庫。小規模な地域絶滅も、種全体の絶滅に直結する。また、ある地域で絶滅しても、県内の他地域に残っているから大丈夫―とはならない。「地域による多様性が失われると、その種は絶滅の危機に直面する」と話す。
保存林ではクマノザクラ、ヤマアジサイ、キイジョウロウホトトギスなどを育てている。本数や植栽面積でなく、地域の生態系を守ることを優先。クマノザクラは町内の文化的価値が高い木を選び、挿し木によるクローン苗を増殖している。万一、親木が倒れても、クローンで復活させられる。保存林は「ノアの箱舟」だという。
外来種の存在は、在来種に遺伝的な悪影響を与える可能性がある。隔離された小森川の環境は、保存林の適地となる。小森川集落は、町内にある矢倉さんの自宅からでも車で約1時間かかる。現地での活動を充実させるため、今年3月に住所を移し、集落唯一の住民となった。
矢倉さんは「サクラの季節だけでなく、年間を通じ何度も小森川に足を運んで、活動に触れてほしい」と話している。
■ビジターセンター建設へ
ビジターセンターでは、矢倉さんが樹木医として活動する中で集めた植物や環境、農業、林業、造園などの専門書や資料、光学顕微鏡などの特別な機材を設置して、一般にも活用してもらう。夏休みの自由研究の手伝いや生涯学習の支援もしたいという。イベント「小森川サクラ祭り」や地域の伝統神事「鯛釣り祭り」では、休憩場所にもなる。
2020年に着工し、基礎コンクリートの工事は完了しているものの、建築資材の不足と価格高騰もあり、21年夏から中断していた。近く建設を再開する。
ただ、補助金などの公的な支援はなく、全て自己資金で賄う必要がある。基本設備を整える来年3月までで350万円、トイレやまきストーブ、外構など「フル装備」で完成するまでに1千万円が必要という。
活動支援の方法については、矢倉さんが代表理事を務める一般社団法人「樹木医甚兵衛」のホームページや交流サイト(SNS)で確認できる。