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南方熊楠賞に江原絢子氏 日本の食物史を開拓

江原絢子氏(和歌山県田辺市提供)
江原絢子氏(和歌山県田辺市提供)
 世界的な博物学者、南方熊楠(1867~1941)にちなみ、民俗学や博物学で業績のある研究者に贈る第32回「南方熊楠賞」に、東京家政学院大学名誉教授の江原絢子氏(78)=横浜市=が決まった。日本における食物史を開拓し、和食文化を学術領域として確立することに貢献したことが評価された。

 主催する和歌山県田辺市と南方熊楠顕彰会(会長=真砂充敏市長)が18日、発表した。

 選考委員会によると、江原氏は食文化史が専門。東京家政学院大学で長らく教壇に立ち、調理という作り手の視点から、日本の食文化を深く探求した。

 江戸時代や近代の料理書に記載された料理を再現し、それらの記載内容と実生活における料理との関係を確認するため、江戸時代の名家の料理や全国各地の郷土料理について調査。そうした研究は、2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録される際の基礎資料となった。

 学会活動を先導し、地方や女性、次世代の研究者の養成にも貢献。赤坂憲雄・選考委員長は「江原氏の研究は、人々の暮らしのまわりに広がる文化に対して文献渉猟(読みあさること)と現地観察を徹底するスタイルを取っており、南方熊楠の精神に大いに通じている」としている。

 江原氏は「江戸時代の料理書を調査し、その再現を重ねてみると、各料理を工夫した人々の声が聞こえてくる気がする。熊楠翁が自然を観察し、さまざまな分野の資料を含めて文字通り渉猟した姿勢に学び、今後も研究を続けたいとの思いを強くしている」とコメントしている。

 南方熊楠賞は1990年に制定。例年、人文部門と自然科学部門から交互に選考している。江原氏の受賞は35人目。



 授賞式と記念講演が5月14日午後1時半から、田辺市新屋敷町の紀南文化会館である。記念講演の演題は「自然を尊重するなかで育まれた日本の食」。定員は先着100人。

 申し込みは、南方熊楠顕彰館内の顕彰会事務局(0739・26・9909)へ。

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 【江原絢子(えはら・あやこ)氏】 1943年、島根県生まれ。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業。高校教諭を経て、名古屋大学で教育学の博士学位を取得。東京家政学院大学家政学部教授となった。2004年に同大学家政学部長に就任し、09年に退職。「家庭料理の近代」(吉川弘文館、12年)、「和食とは何か」(共著、思文閣出版、15年)など多数の著書がある。

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