和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月20日(金)

バレーボール少年団の練習を視察 元日本代表監督の植田さん

南部バレーボールスポーツ少年団の練習を視察する植田辰哉さん(左)。右は同少年団代表の石上貴一さん=和歌山県みなべ町谷口で
南部バレーボールスポーツ少年団の練習を視察する植田辰哉さん(左)。右は同少年団代表の石上貴一さん=和歌山県みなべ町谷口で
ボールを使って練習する前に鬼ごっこをする子どもたち
ボールを使って練習する前に鬼ごっこをする子どもたち
 元男子バレーボール日本代表監督で大阪商業大学教授の植田辰哉さん(56)が12日、和歌山県みなべ町を訪れ、南部バレーボールスポーツ少年団の練習を視察した。植田さんは、将来世界のトップレベルと戦える選手の育成を目標にした中学生、小学生世代のアカデミー設立を目指しており、その参考にしたいと、基礎的な体づくりを大切にする同少年団の取り組みを見て、代表の石上貴一さん(60)と意見交換した。

 植田さんは代表監督退任後、早稲田大大学院で強豪ブラジルの強化策を研究した。ブラジルでは、年齢段階ごとにトレーニング計画を積み上げていくシステムが国内全土、共通の指針で作り上げられていたという。小学校の頃はポジションも決めずに自由に遊びながらバレーボールに親しみ、競技に入っていくのは中学生くらいから。小学生の時の厳しい指導はブラジルではしていないという。

 同少年団には現在、園児から小学6年生まで55人ほどが参加。指導歴34年で、これまで全国大会優勝にも導いている石上さんは、強制ではなく、子どもたちの主体的な参加を重視している。他の習い事との兼ね合いやモチベーションなど個々の事情に合わせて自由に参加できるよう、練習日も週6日設けている。発達段階に応じた効果的な運動をすることで、心身の健康増進や体力・運動能力の向上を図ることを目的にしているといい、練習の前半には、鬼ごっこやリズムランニング、マット運動や跳び箱などを取り入れている。

 植田さんが訪れたこの日も、上南部小学校体育館で子どもたちは開始から1時間近くにわたって、ボールは触らず、関節の可動域を広げる運動や倒立、鬼ごっこ、跳び箱をした。

 石上さんは「こういう運動をしているため、うちのクラブの子どもたちは故障がほとんどない。いろんな地域のクラブを見て、良いと思う部分を取り入れて『動きづくり』をしている」と説明。植田さんも「良いですね。柔軟性やバランスを大切にしていて、やっていることが理にかなっている。この時期に必要なメニューがちゃんと入っていると思う」と話した。

 石上さんは「最後はバレーボール選手として活躍する姿を求めているが、順を追って土台をつくっていくことにやりがいを感じる」とも話した。

 植田さんは現在、アカデミーのたたき台をつくっているところでアカデミーのメニューにはこういったトレーニングを盛り込みたいという。

 植田さんは「ブラジルの監督に、日本はブラジルより30年遅れていると言われてショックを受けたし、このままでは日本が予選も通過できない時代が来ると思う。バレーボール界に貢献したいという思いがある。これから立ち上げるアカデミーが定着し、日本が世界で戦える礎になっていけば」と語った。