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2025年04月18日(金)

【動画】乗り手を選ぶBEV ホンダ N―VANe:をおじさんリポーターが試乗

モーターで走るN―VANe:。加速は静かで力強い(和歌山県田辺市たきない町で)
モーターで走るN―VANe:。加速は静かで力強い(和歌山県田辺市たきない町で)
前後の座席を畳んで大きな積載スペースをつくることができる
前後の座席を畳んで大きな積載スペースをつくることができる
 ホンダのN―VANe:(エヌバンイー)は、軽自動車タイプの商用電気自動車(BEV)。助手席と後部座席を畳んで大きな積載スペースをつくることができる。一充電の走行距離は245キロと長く、商用のほか、趣味やレジャーで使える個性的な車だ。

■シート畳んで広々と

 N―VANe:は、幅広い用途に対応した軽商用車「N―VAN」のBEVモデル。商用車ならではの大きな荷室やシートアレンジをそのままに、BEVの力強い動力性能や静粛性、経済性を加えた。

 バリエーションは4タイプ。商用から個人利用まで幅広く使える4人乗り2タイプと、商用に特化した1座席と2座席のモデルがある。

 今回試乗したのはこのうち、趣味やレジャーなどへの利用に向いた4人乗りのe:FUN(ファン)というモデル。ツートンカラーの設定やLEDヘッドライトを採用するなど、装備や内外装の仕上げは乗用車タイプの軽自動車とほとんど変わらない。

 N―VANe:の持ち味は、広い室内空間と独特のシートアレンジによる荷室の拡大、助手席側のセンターピラーをなくした広い開口部などだ。商用車は荷室を広くした結果、後部座席のスペースが狭いモデルが多いが、N―VANe:は身長172センチのリポーターが座っても膝の前に握り拳縦一つ分の余裕があった。

 後部座席と助手席は、床に張り付けるように、低い位置に畳むことができる。後部座席はヘッドレストを抜いて、背もたれにあるひもを引っ張ることで座席全体が前方に倒れる。助手席もヘッドレストを外し、背もたれを前に倒してから、さらに座面を前向きに押し倒す。

 これにより生まれる荷室の奥行きは、助手席側で2645ミリ。自転車は楽々と積めるし、ウッドベースや和弓など、普通車では積みにくい、長い物もすんなり収まってしまう。床から天井までの高さは1370ミリあり、背の高い荷物も積みやすい。

 リアシートの座面は薄くて座り心地は硬め。しかし、長時間の移動でない限り許容の範囲内と思う。

 内装のデザインは、荷物の積みやすさを優先した直線基調になっており、それが室内の広々とした印象にもつながっている。ドアの内側や荷室の壁面には縦のラインを施し、硬い物がぶつかっても傷が目立たないよう工夫している。

■静かで力強い加速

 N―VANe:のモーターは、最高出力47kW(64馬力)、最大トルク16・5キロを発生する。64馬力の最高出力はガソリン車のターボエンジンと同等で、発進加速はスムーズで力強い。急な上り坂でもアクセルを少し踏み増せば、騒音が高まることなく速度を増していく。

 路面が荒れた場所では、室内に入り込んでくる騒音はやや大きめ。商用車にもかかわらず足回りは柔らかめの設定で、乗り心地は良かった。

 BEVは重たいバッテリーを床下に積むので、背が高い車でも重心が低くなるが、N―VANe:は車高が1960ミリもあるので、その恩恵は少なめ。カーブの続く山道では丁寧なステアリング操作を心掛けた。

 ギアの選択は、先進的なボタン式を採用。シフトレバーはなく、D(ドライブ)、N(ニュートラル)、R(後退)、P(パーキング)のボタンで切り替える。ただし、サイドブレーキは足踏みの機械式。コストはかかるが電子パーキングブレーキを採用すれば、より扱いやすくなるだろう。

■一充電で245キロ

 N―VANe:の一充電走行距離は245キロ。日産自動車の人気BEV「サクラ」(180キロ)より65キロ長い。実際の走行可能距離は道路の状況や走り方、エアコンやヒーターの利用などにより変わるが、仮に8掛けとしておよそ200キロ。例えば、田辺市から新宮市までは山間ルートで往復180キロ、海岸ルートで210キロなので、満充電でぎりぎり帰って来られるかどうかの移動距離だ。

 継ぎ足し充電は、バッテリーの残量警告灯が点灯してから30分の急速充電(50kW出力)で80%まで回復する。いずれにしても、生活圏内の近距離移動を中心にした使い方に向いている。

 総合して、N―VANe:は趣味やレジャー、商業目的でも「使い方がはっきりした人向けの個性的な車」と言えそうだ。

 なお、電気自動車の購入補助金は2025年4月1日から増額になり、N―VANe:は従来の55万円から57万4千円に、2万4千円アップした。

 【試乗車提供】ホンダカーズ田辺・稲成店(田辺市稲成町46、0739・24・4500)



 【データ】全長×全幅×全高=3395×1475×1960ミリ▽ホイールベース=2520ミリ▽車重=1140キロ▽駆動方式=FF▽モーター=最高出力47kW(64馬力)、最大トルク=162Nm(16.5キロ)▽一充電走行距離(WLTCモード)=245キロ▽車両本体価格=291万9400円

 リポーター 長瀬稚春=運転免許歴50年。紀伊民報制作部長