和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年03月31日(月)

【動画】那智の滝で「能舞」奉納 和歌山県那智勝浦町

那智の滝の前で奉納された能舞(26日、和歌山県那智勝浦町那智山で)
那智の滝の前で奉納された能舞(26日、和歌山県那智勝浦町那智山で)
 世界遺産の熊野三山を舞台に25~27日、日本を代表する古典芸能である能の奉納公演があった。26日には、和歌山県那智勝浦町の「那智の滝」前でシテ方観世流能楽師の鈴木啓吾さんらが披露。鑑賞に訪れた人たちを幽玄の世界に誘った。

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録20周年の特別企画「熊野三山奉納公演『能舞』~日本の古典芸能と祈り」として、実行委員会が開いた。

 熊野に造詣の深い作家の天川彩さんが総合プロデュースし、重要無形文化財(能楽総合)指定保持者である鈴木さんらが出演。熊野三山それぞれにゆかりのある能を、ダイジェスト版である「能の舞」として披露した。

 熊野那智大社の別宮・飛瀧神社のご神体である那智の滝の前では、鈴木さんらが天下泰平などを祈る「神歌(かみうた)」を奉納した後、那智大社の男成洋三宮司と那智山青岸渡寺の高木亮英住職、天川さんが熊野の芸能をテーマに話し合った。その後、薪能のための火入れ式を執り行い、最後に鈴木さんが「羽衣」を披露した。

 奉納を終えた鈴木さんは「熊野にゆかりのある鈴木姓の一人として、熊野の神様、仏様にご恩返しができればという気持ちで奉納した」と笑顔。天川さんは「熊野三山での奉納は7年前から計画し、コロナ禍で断念しかけたが、今回、世界遺産登録20周年の終幕に奉納することができて感無量。皆さんのご協力に感謝したい」と話していた。

 実行委によると、能は神社仏閣での神事・法会の際に上演され、熊野でも室町時代から江戸時代までは頻繁に行われていたが、熊野三山全てを包括しての能の奉納公演は江戸時代以来という。