和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月20日(金)

ロケット事業で地元活性化 串本で議員研修会

町議会がロケット事業について開いた研修会(和歌山県串本町西向で)
町議会がロケット事業について開いた研修会(和歌山県串本町西向で)
 和歌山県串本町田原に建設中の国内では民間初となる小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」を地域活性化に生かそうと、町議会は27日、同町西向の町役場古座分庁舎で研修会を開いた。町当局の説明を受け、今後の取り組みについて考えた。


 町企画課の濵地弘貴課長がロケット事業のこれまでの経過などを説明した。

 宇宙活動法の施行を受け、これまで国でしかできなかった人工衛星の打ち上げが民間でも可能になったことを受け、キヤノン電子など4社が出資し「スペースワン株式会社」を設立。田原で「スペースポート紀伊」の建設工事を進めており、2021年度中の第1号発射、20年代半ばの年間20機打ち上げを目指している。

 発射場建設地の約7割は関西電力が町に寄付した土地だったが、残り約3割の民有地の地権者は200件以上あり、買収の難航が見込まれていた。町は、古座分庁舎内に「民間ロケット射場誘致推進室」を設置し、地元に精通した町職員OBを配置した。

 こう説明した濵地課長は、用地買収が「奇跡的に1年弱で完了した」と述べ、OBの活躍と地元の協力に感謝した。事業者も「これだけ(建設に)反対がないのは珍しい」と驚いていたという。

 発射場建設は現在、道路などの工事をしているが、夏から管制塔、組立工場、発射場などの施設建設に入る。長さ約18メートルのロケットは群馬県の工場で製造され、三つに分けてトレーラーで運搬されてくるという。濵地課長は、年間20機の発射となれば、運搬コストなどを考えると、将来的には田原周辺にロケット製造工場が建設される可能性が高いと期待した。

 スペースポート紀伊は「契約から打ち上げまで(の期間の)世界最短」と「打ち上げの世界再頻度」を目指している。鹿児島県にある種子島と内之浦の発射場は国事業のため、国や研究機関のプロジェクトが優先されるが、紀伊では、事業者が希望するタイミングでの打ち上げが可能になるというメリットがある。

 濵地課長は、ロケット事業では、直接投資効果、雇用創出効果に加え、新たな観光資源としても期待でき、中長期的には町が、宇宙関連産業の集積地域になる可能性もあると期待。今後の取り組みとして、見学場の設置▽ロケット関連商品の開発▽子どもたちの教育への活用▽宇宙・人工衛星などの関係者との交流―などを挙げた。

 課題となっている交通渋滞は、打ち上げ前後の国道42号で串本を中心に大阪方面へ最大20キロ、名古屋方面へ最大約20キロと予想されている。地域住民の生活への影響が懸念されることから、県が責任を持って対策を講じているほか、見学場の分散などを考えているという。

 濵地課長は、内之浦へ視察に行った際のロケット発射動画を上映。発射場から2・8キロ離れた見学場でも大迫力だったと振り返った。町ロケット推進室の平井治司さんは「田原は日本で一番近くでロケット発射が見られる場所になる」と述べた。

 町議から、いかに地域経済に効果を出すかが大事との指摘があり、平井さんは、ロケット発射の3時間前ぐらいから見物人が集まってくると説明し、地元商工会と連携して見学場周辺での物産販売を考えていると述べた。

 議員から「あと2年で準備ができるのか」「町内に宿泊施設が足りない。民泊やゲストハウスを増やすべきでは」などの指摘があり、濵地課長は、見学場を先走って建設してもロケットが見えない可能性もあるなどと述べ「急ぐと、いろんなひずみが出る可能性がある」と理解を求めた。