和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年09月13日(金)

中学野球部が地域移行 「プレー環境つくりたい」、和歌山県上富田町

監督となった高松裕之教諭(右から2人目)の話を聞く「上富田クラブ」の選手ら=和歌山県上富田町岩田の上富田中学校で
監督となった高松裕之教諭(右から2人目)の話を聞く「上富田クラブ」の選手ら=和歌山県上富田町岩田の上富田中学校で
 和歌山県上富田町で8月、中学生の軟式野球クラブ「上富田クラブ」が発足した。町内唯一の中学校である上富田中(上富田町岩田)が取り組む部活動の地域移行の一環。周辺で学校に野球部がない生徒も受け入れ、一緒にプレーできる環境をつくりたいとの思いから移行が実現した。

 現在は、野球部から移った2年生11人と1年生7人がメンバー。活動の頻度は部とほぼ同じで、拠点は学校グラウンド。部室や備品はそのまま使う。ユニホームも変えないという。

 顧問だった高松裕之教諭(37)が監督、副顧問だった米島輝教諭(34)がコーチを務める。2人は「有償ボランティア」で、公務員が求められる職務専念義務の免除と兼職兼業のそれぞれを町教育委員会に届け出ているという。

 クラブの発足に伴い、野球経験者の保護者や地元住民がコーチとして加わった。高松監督は「指導者が増えたことは非常にありがたい。地域の方に携わってもらえるのは、子どもたちにとっても良いことだと思う」と話している。

 県内中学校で野球部の地域移行は初めてとみられる。保護者の一人で、無償ボランティアとしてクラブ代表に就いた町職員の出羽正典さん(47)は「地域での野球人口の増加と、地域から愛されるチームを目指したい」と展望を話す。

 選手の会費は月2千円としている。学校の部ではなくなり、運営費はクラブとして負担するが、「まず動き出してみよう」と話がまとまったという。

 入団の窓口は、総合型地域スポーツクラブ「くちくまのクラブ」(シーカ)(0739・47・5711)へ。上富田クラブは募集対象を野球部がない学校の1年生としている。見学や体験も歓迎する。

■移行へ 続く検討

 上富田町では、町教委と上富田中、シーカの3者が2022年5月以降、定期的に会合を開き、部活動の地域移行に関して話し合っている。周辺市町と比べて取り組みは早い。

 上富田中は本年度、剣道、柔道、女子バレーボール、陸上競技の各部の新入生募集を停止した。昨年度から、バドミントン部と水泳部も募っていない。

 学校に文化系クラブが三つあることも踏まえ、3者は昨年、町内の各種サークル45団体を対象に、中学生の受け入れが可能かどうかをアンケートで尋ねた。町教委によると、このうち俳句や絵画、生け花などの12団体が「受け入れられる」と回答した。