和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月25日(月)

新しい地域紙目指す 異色コラボで挑戦、紀伊民報と都市圏大手社員

新聞を通じたワークショップに取り組む「ことこらぼ」紀伊民報チーム(和歌山県田辺市秋津町の紀伊民報で)
新聞を通じたワークショップに取り組む「ことこらぼ」紀伊民報チーム(和歌山県田辺市秋津町の紀伊民報で)
 和歌山県田辺市の事業所と都市圏の大手企業社員が協働して、地域課題を解決するビジネスプラン作りに挑む「ことこらぼ」に、紀伊民報が参加している。業種も距離も超えたタッグで、新しい地域紙の在り方を模索する。


 新聞業界では、若い世代を中心とした活字離れが課題となっている。地方では配達員の高齢化や人口減少の影響で、宅配の維持が難しい地域も増えている。

 「ことこらぼ」は日本能率協会マネジメントセンター(東京都)の人材育成事業で、田辺市が協力している。大手社員は日常の仕事と非日常である地方の活動を数カ月間行き来することで「価値観が揺さぶられる体験」ができる。受け入れ企業も異なる視点を加えることによる「化学反応」が期待できる。

 紀伊民報と協働しているのは、日本生活協同組合連合会の小池史朗さん(44)=東京都渋谷区=と花王カスタマーマーケティングの栗山怜子さん(36)=大阪市=、三井住友海上の篠原裕貴さん(41)=北九州市=の3人。業種も勤務地もさまざまで、県内出身でもない。

 24~26日に市内で現地調査があり、紀伊民報は本社の見学やワークショップを通じて、地域新聞の実情を伝えた。また、田辺市南新町で洋服店を営みながら、さまざまなイベントを手がける横矢雄一朗さん(39)を招いてのセミナーで、地域づくりと新聞の関わりについて意見を出し合った。

 小池さんは「新聞記事の書き方は合理的なのだろうが、普段読まない人からすると古文のように感じて難しい。写真や動画の活用法などを考え、現代になじみやすい見せ方が必要ではないか」と提言する。

 栗山さんは「購読が少ない若年層へいかに発信できるか。記事を掲載してもらいたいという地域の要望はあると感じる。ニーズを整理し、考えたい」とメンバーで高校生や市職員からも聞き取り調査をした。

 篠原さんは「転勤が多く、勤務地の情報を知るため、地方紙に目を通すが、独特のニュースがある。情報の蓄積を生かしつつ、大手紙にはできない大きな転換を図り、新たな価値を生み出せないか」と話した。

 小山雄希智社長(47)は「地域を知る人と知らない人、両方の意見をすり合わせる中、新聞への期待を感じた。地域づくりでお手伝いできることはまだまだある。新しい地域紙の在り方を示す第一歩にしたい」と話している。

 「ことこらぼ」では、現地調査とオンラインでの協議を重ね、10月にプランを発表する。今回は大手7社の9人が参加し、紀伊民報のほか、美装業のクラシアル(田辺市上屋敷1丁目)と体験学習などを行う山里舎(同市本宮町)の3社に分かれて取り組んでいる。