和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月27日(水)

遭難トルコ軍艦の遺品に触れる 串本・大島小「先祖が関わっていたかも」、和歌山

大砲の弾を持ち上げる児童(和歌山県串本町姫で)
大砲の弾を持ち上げる児童(和歌山県串本町姫で)
 和歌山県串本町大島小学校の5、6年生12人はこのほど、同町姫の旧養春小学校内にあるエルトゥールルリサーチセンターを見学した。海中から発掘し保管されているトルコ軍艦エルトゥールル号の遺品を見たり、触ったりして約130年前の遭難事故に思いをはせた。

 エ号は1890年9月16日夜、台風に遭遇し同町樫野沖の「船甲羅(ふなごうら)」と呼ばれる岩礁に衝突。多数の乗組員が犠牲となったが、紀伊大島の島民が救助に尽力し、69人が助かった。このことが日本とトルコが強い友好関係で結ばれるきっかけになった。

 同校では、総合学習でエ号の歴史や水中発掘調査の経過、出土品の内容、日本とトルコとの交流について理解を深めている。今回もその授業の一つで、センター管理者の枠谷かおりさんが講師を務めた。

 枠谷さんによると、エ号が沈没した周辺の海底で2007~15年に発掘調査が行われ、8千点以上の遺品が引き揚げられた。その多くが船に使われていたくぎやねじだったという。金属と木が複合し保存処理が難しい木製の滑車などは、奈良大学が保存に向けて取り組み始めていることなどを児童に紹介した。

 特殊な形をしたティーカップ「ムスタッシュカップ」は実際に遺品を見せながら説明。当時は豊かな口ひげを生やした男性が多く、ひげを整えるろうが溶けずに紅茶などを飲むのに利用されていたという。発掘したものは横浜焼で、日本からの土産物とされている。さらに、別の場所からは皿も見つかり、カップとセットであることが分かったという。

 枠谷さんは遺品を引き揚げて保管、展示するまでには記録や脱塩、クリーニング、表面の保護、番号を付けていくナンバリングなどさまざまな工程が必要と紹介。「調査や研究を通して船のことが分かると、当時の時代背景や人々の暮らしが分かってくる。そうすれば、当時の人の気持ちにより近く触れることができ、交流につながる。調査や研究は基本的なことだが、すごく大切」と語った。

 その後、児童は約14キロの大砲の弾を持ち上げてみたり、ナンバリングを体験したりして遺品に触れた。

 6年生の冨田力斗君は「記念館で遺品を見ていたが、実際に触るのは初めて。展示するまでの手順がたくさんあることにびっくりした。身近で起こったことなので、先祖が関わっていたかもしれないと思うと親近感が湧く」と話した。