和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月11日(金)

「英会話教室」は熊野古道 81歳中岸さん、外国人客と交流し動画投稿、和歌山

熊野古道を歩く外国人をスマートフォンで撮影する中岸公さん(左)=和歌山県田辺市本宮町本宮で
熊野古道を歩く外国人をスマートフォンで撮影する中岸公さん(左)=和歌山県田辺市本宮町本宮で
 和歌山県田辺市本宮町本宮の中岸公さん(81)は、熊野古道を歩く外国人観光客に感想を語ってもらい、その様子を撮影した動画を交流サイト「インスタグラム」に投稿している。英語の勉強にと今春に始めた趣味だが、協力者は300人を超えている。「『旅の宝物になった』と言ってくれる人もいて、毎日が楽しい」と充実ぶりを話す。


 「初めまして。どこから来ましたか」。世界遺産・熊野本宮大社の周辺で外国人客を見かけたら、英語で声をかける。ガイドであることも含めて自己紹介し、日本式の参拝方法や熊野古道の歴史などを説明した後、趣旨を了解してくれた人たちを撮影している。

 本紙記者が同行した日、中岸さんは本宮大社近くにある祓殿(はらいど)王子前で、オーストラリアから来た女性5人組を自身のスマートフォンで撮影した。記者が「彼(中岸さん)の英語をどう感じたか」と問うと、1人が「ファンタスティック(素晴らしい)!お世辞ではないです」と笑顔で答えた。

 中学校の英語教諭として長く勤めた中岸さんがインスタグラムを始めたのは今年4月。その約1カ月前に新宮市内のスーパーマーケットで買い物をしていた際、居合わせた客のアメリカ人女性から話しかけられ、久しぶりの英会話が楽しかったことがきっかけだ。動画投稿サイトを見てアカウントの作り方を独自に学んだ。

 特に聞く、話すという「使える英語」の力を付けたいという思いもある。「私のためにと協力してくれるものだから、心をわしづかみされる話ばかり」。動画を投稿する際には、感想を英文でつづっている。

 2019年7月に脳梗塞で倒れ、当初は歩くことも難しかったが、リハビリを続けて回復。そんな中でコロナ禍に入り、今春までは観光客と英語で話す機会が途絶えていた。「約5カ月間で300人。毎日のように続けたら、千人に届くかな」。英語力を高めたいという情熱は尽きない。