和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

千里の浜でウミガメ産卵 3週遅く今季初めて、全国有数の和歌山・みなべ

アカウミガメが産卵した千里の浜。跡が残っている(和歌山県みなべ町山内で)
アカウミガメが産卵した千里の浜。跡が残っている(和歌山県みなべ町山内で)
千里の浜の駐車場近くに張られている遮光ネット(和歌山県みなべ町山内で)
千里の浜の駐車場近くに張られている遮光ネット(和歌山県みなべ町山内で)
 和歌山県みなべ町山内の千里の浜で13日夜、アカウミガメ3匹が産卵した。産卵の確認は今季初めて。昨年や例年に比べると3週間以上遅いが、保護している人たちは、1日に3匹がまとまって産卵したことにほっとするとともに、今後、産卵が続くことを期待している。


 ウミガメの保護調査や研究をする「NPO日本ウミガメ協議会」(松沢慶将会長、大阪府枚方市)のボランティアスタッフらが確認した。同日午後9時~10時に4匹の上陸が確認でき、そのうち3匹が産卵した。

 千里の浜は全国有数のアカウミガメの産卵地で、本州では最も産卵密度が高い。毎年、5月中旬から8月上旬にかけて産卵があり、6月下旬から7月上旬にかけて回数が多くなる。

 今季の調査は、町教育委員会の職員が5月22日から、日中にドローン(小型無人機)を使って歩いた跡を確認する方法で実施。6月12日からは、日本ウミガメ協議会のボランティアスタッフや学生らが現地に滞在して続けている。

 町教委と協議会によると、6月12日までに19回の上陸が確認できたが、全て産卵していなかった。

 13日が産卵の初確認で、例年の5月20日ごろに比べると大幅に遅れている。昨年は6月12日までに22回の上陸があり、産卵が6回あった。1980年代後半の調査開始以来2番目に産卵が少なかった2021年でも上陸は6回で、産卵は4回あった。

 協議会ボランティアスタッフの江口英作さん(38)=京都府城陽市=は「全国的に上陸、産卵ともに少ない。海水温が低いことで活動が鈍いのが、遅くなっている要因ではないかといわれている」という。4匹がまとまって上陸したことについては「これまで波が高い日が続いていたので、上陸しづらかったのでは」と話す。

 千里の浜でのウミガメの産卵は、1990年代初めに1シーズンに約350回確認できたが、その後減り始め、98年には過去最少の29回にまで落ち込んだ。再び増え始め、2012、13年にはいずれも300回近くまで回復。しかし翌年から再び減少傾向となり、21年には31回まで減った。昨年は49回あり、増えてくることが期待されている。

 江口さんは「ウミガメは1シーズンに2、3回産卵する。13日に複数の産卵があったことが大きい。それとは別に個体識別の標識が付いたウミガメも確認できており、今後、増えてくることに期待したい」と話している。

■8月中旬まで調査

 日本ウミガメ協議会は、8月中旬まで調査研究を続ける。毎日午後8時から午前3時まで1時間置きに延長1・3キロの砂浜を歩き、ウミガメの上陸と産卵を確認する。ウミガメの大きさを測り、個体識別のための標識も付ける。食害を防ぐために産卵場所に防護柵をかぶせたり、ふ化率を調べたりもする。

 町教委も調査や保護に加わり、地元の有志でつくる「みなべウミガメ研究班」や若者でつくる「青年クラブみなべ」のメンバーも活動を手伝う。

 町教委は今季、産卵観察の受け入れを4年ぶりに再開しており、週末の申し込みは、ほぼ定員(50人)に達している。観察の詳細は町のホームページで確認できる。問い合わせは町教委(0739・74・3134)へ。

■「浜にライト向けないで」

 みなべウミガメ研究班は今年も、千里の浜の南側にある駐車場近くの柵に遮光ネットを張った。

 ウミガメは光に敏感なため、夜間に車のヘッドライトが砂浜に差し込まないようにするのが目的で、道路沿いの柵約50メートルにわたって張っている。町教委は「浜にヘッドライトを向けないで」と協力を呼びかけている。