和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

香り生かしたシロップ考案 梅新品種で有本さんが創意工夫功労者賞

有本農園が製造した翠香のシロップと有本陽平さん(和歌山県みなべ町東岩代で)
有本農園が製造した翠香のシロップと有本陽平さん(和歌山県みなべ町東岩代で)
 文部科学省による2023年度科学技術分野・文部科学大臣表彰の受賞者発表があり、和歌山県みなべ町東岩代の有本農園代表、有本陽平さん(37)が創意工夫功労者賞を受賞した。梅の新品種「翠香(すいこう)」の香りを生かしたシロップの製造方法を考案したことが評価された。有本さんは、受賞をきっかけに翠香を広く知ってもらえることに期待したいという。


 表彰は、科学技術に携わる人の意欲向上を図り、国内の技術水準の向上に寄与することが目的で、科学技術賞、若手科学者賞、創意工夫功労者賞、研究支援賞の4部門がある。そのうち創意工夫功労者賞は、優れた創意工夫により職域における技術の改善向上に貢献した人が対象で、全国から1747人の応募があったうち、480人が受賞した。

 有本さんは農園の代表で、梅の主力品種「南高梅」のほか、果皮や果肉が赤いのが特徴の「露茜(つゆあかね)」や「翠香」を栽培し、それらの梅を加工している。そのうち翠香は11年に苗木を植えて栽培を始め、21年から加工するようになった。

 翠香は梅の「月世界」と「梅郷」の交雑品種で、農業・食品産業技術研究機構(茨城県つくば市)が育成し、11年に品種登録された。香りを生かす加工が課題となっていたため、有本さんは県工業技術センター(和歌山市)の協力を得て、洋梨のような香りを生かす加工方法を研究。香りを出すには熟すのが必要だが、あまり置き過ぎると傷むことから、収穫のタイミングや追熟の期間を試行錯誤した。加工の原料は翠香とグラニュー糖だけで、21年秋にシロップを商品化した。

 有本さんは今回の受賞に「翠香は素晴らしい品種。栽培している人はまだまだ少ないが、梅といえば翠香となるくらいにもっと多くの人に知ってもらえればと思う」と話す。今後、露茜も含め他の品種でも商品展開を考え、梅の魅力を世界にアピールしたいという。

 同センター食品開発部主任研究員の中村允さん(46)も「梅は梅干し以外でも加工品を増やす必要がある。翠香はその一つで、特徴的な香りを生かす必要があった。有本さんが取り組んでくれたことはありがたい。これを機にもっと注目されればと思う」と話している。

 県内では、有本さん以外に八旗農園(紀の川市)の中浴泉さん(65)が創意工夫功労者賞、キクロン(和歌山市)の塩田かおりさん(58)が科学技術賞(技術部門)を受賞した。