和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

洋ナシのような香り みなべの有本農園が梅シロップ開発

梅の「翠香」の実と初めて商品化したシロップ(みなべ町東岩代で)
梅の「翠香」の実と初めて商品化したシロップ(みなべ町東岩代で)
 みなべ町東岩代の「有本農園」(有本陽平代表)は、洋ナシのような香りが特徴の梅の新品種「翠香(すいこう)」を使ったシロップを商品化し、10日から販売を開始した。翠香を使った加工品は業界初という。県も翠香の加工品作りにつなげるため、香りを生かす追熟や加工方法の技術開発をしてきた。

 翠香は梅の「月世界」と「梅郷」の交配品種。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)によって育成され、2011年に品種登録された。県工業技術センターや県うめ研究所は16年度から、香りの成分分析や香りの特徴を生かす追熟、加工方法の研究を重ねてきた。

 有本代表(35)は梅の生産、梅酒などの加工販売をしている。以前に、農研機構やうめ研究所で研修を受けた縁があり、翠香を知ってその香りが気に入り、品種登録されるとすぐに栽培を開始した。10アールの畑で栽培している。

 商品化に当たっては県の協力も得ながら、収穫のタイミングや追熟期間を試行錯誤するなどし、ようやく完成させた。商品は翠香とグラニュー糖だけで漬けて作った。150ミリリットル入り、1200円(税込み)。香りを維持するために、冷蔵保存してほしいという。

 南高梅との違いを楽しんでもらおうと、今回新たに南高梅のシロップも作り、同時に販売している。ほかにも、南高と赤い色が特徴の「露茜」のブレンドシロップもある。

 県の研究関係者は「商品化を目指して研究を続けてきて、ようやく商品ができたことをうれしく思う。これをきっかけに翠香の知名度が上がり、他の加工品にも広がっていくことを期待したい」と話す。

 有本代表は「皆さんに翠香を広めたいという思いで多くの人の協力を得て商品化できたことに感謝したい。水や炭酸水などで割って飲んだり、かき氷やヨーグルトと合わせるのもよいと思う。南高のシロップなどと色や香りの違いを楽しみ、ぜひ皆さんに味わっていただきたい」と話している。

 販売は同農園のインターネットホームページでしているほか、みなべ町の国民宿舎紀州路みなべにも置いている。