和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月26日(木)

移民の歴史を後世に 次世代が交流の扉開くシンポ

シンポジウムで発表を前に自己紹介する田辺高校と和歌山大学の学生(23日、和歌山県田辺市東陽で)
シンポジウムで発表を前に自己紹介する田辺高校と和歌山大学の学生(23日、和歌山県田辺市東陽で)
 ブラジル移民をテーマにしたシンポジウム「新天地の開拓に挑んだ先人が残したもの」が23日、和歌山県田辺市東陽の市文化交流センター「たなべる」であった。移民の歴史を学んだ高校生や大学生が「先人の思いを後世に伝えたい」と発表。次世代による現地との交流に意欲を見せた。

 みなべ町出身で、戦後ブラジル移民再開に貢献した松原安太郎氏(1892~1961)の「生誕130周年記念顕彰事業実行委員会」と県中南米交流協会が主催、紀伊民報などが共催。紀南から多くの人がブラジルに移住し、現地では移民3世が活躍している。紀南の若者との交流のきっかけをつくろうと企画した。

 田辺高校の5人は実行委代表の真砂睦さんの出前講座をきっかけに、ブラジル移民について学習。現地のブラジル県人会にオンラインでインタビューするなどして、移民の思いや現地の暮らしを学んできた。

 シンポジウムでは「情報が少ない中、ブラジルに向かった決断がすごい」「多様な人種を受け入れる寛容さが大切と実感。コミュニケーションを深めるため、英語の勉強を頑張りたい」「移民の歴史が薄れている。若い世代が交流して、先人の思いを後世につなぎたい」などと発表した。

 2年生の村上歌音さんは「オンラインで交流したことで、移民の思いやブラジルの国民性が感じられた。共通の趣味などをきっかけにSNS(交流サイト)でつながり、若い世代で交流を深めていければいい。縁のなかったブラジルが一気に身近になった。ぜひ現地に行ってみたい」と話した。

 和歌山大学の学生7人も相互理解の大切さや若い世代で交流を深める提案などについて発表した。

 パネリストで参加した田辺市古尾の龍泉寺住職で日系3世の田中実マルコスさんは「若者が移民に興味を持ってくれてうれしい。2世、3世との交流の場をつくってほしい」、進行役を務めた和歌山大学の東悦子教授は「若者が自ら行動して新しい交流を生み出した。多様な文化に触れることで豊かな経験ができる」と講評した。

 来年10月には「第2回県人会世界大会」があり、ブラジルやペルーなど南米、北米の県人会から約300人が来県する。真砂さんは「若い世代が新しい扉を開いてくれた。つながりを広めてほしい。来年の世界大会に向け勢いがついた」と笑顔を見せた。