和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

海外移民の歴史知って 南部公民館でパネル展

南部公民館のロビーで始まった移民史のパネル展。みなべ町出身の松原安太郎さんも紹介されている(和歌山県みなべ町芝で)
南部公民館のロビーで始まった移民史のパネル展。みなべ町出身の松原安太郎さんも紹介されている(和歌山県みなべ町芝で)
 和歌山県から中南米や北米、豪州などに渡った移民の歴史を紹介する県主催のパネル展が19日、みなべ町芝の南部公民館ロビーで始まった。31日まで。今年は、「ブラジル移民の父」と呼ばれる岩代村(現みなべ町岩代地域)出身の松原安太郎さん(1892~1961)の生誕130周年でもあり、関係者は「これをきっかけに国際交流に関心を持ってもらいたい」と呼びかけている。


 県は来年、第2回和歌山県人会世界大会の開催を予定しており、それに向けて移民史や異文化への理解を深めてもらおうとパネル展を企画した。タイトルは「和歌山と移民~海外へ移住した先人の歴史」。

 県国際課によると、県から海外への移民は明治期から始まり、ハワイやアメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジルなどに仕事を求めて渡った。その数は第2次世界大戦前が約3万1千人、戦後が約2千人で、全国の都道府県別では6番目に多い。移住者の多くは永住ではなく、出稼ぎが目的で、家族だけでなく学校や寺、神社などに送金し故郷の暮らしを支えていたという。各国で親睦や相互扶助を目的に県人会も組織されている。

 パネル展では、移住した人の生活や功績などを国別にパネル26枚を使って紹介している。

 ブラジル編では松原さんも取り上げられている。松原さんはコーヒー栽培や牧畜を手がけて大農場主となり、戦後、日本人家族を移住させる「松原計画」を立て、それをきっかけに多くの人がブラジルに渡った。この計画では紀南からの移住が多く、清川村(現みなべ町清川)の村長親子も渡ったという。

 この他、ブラジル県人会の初代会長として尽力した富田村(現白浜町)出身の竹中儀助さん、ハワイを経てアメリカに渡りレタスなどの栽培で成功した江住村(現すさみ町)出身の南弥右衛門さんらも紹介されている。

 今回のパネル展は、2017年のブラジル移住100周年記念式典、19年の第1回和歌山県人会世界大会をきっかけに開いたのに続いての開催で、昨年11月から和歌山市で始まり、各市町村を巡回している。紀南地方ではみなべ町の後、9月中旬から来年3月初めまで予定されている。

 また、松原さんの生誕130周年記念として、県中南米交流協会などでつくる実行委員会がパネル展をはじめ、講演会やシンポジウムなどを計画している。

 県国際課は「和歌山県から多くの人が海外に渡り、活躍した人もいる。その歴史を知ってもらい、国際交流にも関心を持ってもらいたい」と話している。