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2024年11月25日(月)

ミカン育てる過程作品に 紀南アートウイーク、農園で芸術深化

ミカンとアートについてトークする廣瀬智央さん(右奥)と原拓生さん=和歌山県田辺市上秋津で
ミカンとアートについてトークする廣瀬智央さん(右奥)と原拓生さん=和歌山県田辺市上秋津で
 ミカンをテーマにした芸術祭「紀南アートウイーク」(実行委員会主催、紀伊民報など後援)で、共有農園を開拓し、ミカンを育てる過程そのものをアート作品とするプロジェクトが和歌山県で始まった。主宰するミラノ在住の現代美術家、廣瀬智央さん(59)は「時間をかけて多様な人が交流する中で、アートを深化させたい」と話している。


 プロジェクトの中心は誰もが自由に利用できる共有農園。田辺市内で適地を探している。苗木を育てることから始め、数十年を経て、果実が実り、アート作品も点在する―。そんな農園を目指したいという。

 廣瀬さんの代表作の一つが、レモン3万個を用い、色彩だけでなく嗅覚も刺激する「レモンプロジェクト03」(1997年)。「かんきつ」類をテーマにした作品に引かれた藪本雄登実行委員長(34)が、芸術祭に誘致した。

 「秋津野ゆい倉庫」(田辺市上秋津)では、廣瀬さんがミカンを使用したインスタレーション(展示空間を含めた全体を作品としたアート)を展示。ミカンの木や果実、加工品、香り、摘果ミカンで作った和紙、ミカン農家へのインタビュー映像などで構成している。

 「完成品を展示するだけでなく、素材を生み出す過程も作品にし、使用後も再利用して循環するのがプロジェクトの狙い。今回の展示はそのプレゼンテーションで、ぜひ体感してほしい」と話している。

 8日には秋津野ゆい倉庫前で、ミカン苗木の贈与式があった。プロジェクトに賛同した個人や事業所など7組が廣瀬さんと地元ミカン農家、原拓生さん(54)から2年生の苗木を受け取った。それぞれが育て、共有農園に持ち寄る。

 原さんは「ミカンが育つ地域は限られる。季節の風を感じながら農作業をしていると、地域の豊かさを感じられる。多くの人に体験してほしい」と呼びかけた。

 紀南アートウイークは秋津野ゆい倉庫をはじめ、田辺市内4会場で作品を展示している。16日まで。鑑賞時間は各会場で異なる。紀南アートウイークのホームページで確認できる。