和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

キッチンカーに新風 異業種、移住者が出店

不定期で産直店「紀菜柑」(和歌山県田辺市秋津町)やイベントに出店する「PEASANT KITCHEN SU」(上)と

田辺市中辺路町近露や上富田町のスーパーで焼き鳥を販売する「よっしー」
不定期で産直店「紀菜柑」(和歌山県田辺市秋津町)やイベントに出店する「PEASANT KITCHEN SU」(上)と 田辺市中辺路町近露や上富田町のスーパーで焼き鳥を販売する「よっしー」
 新型コロナウイルス禍が長引く中、密を避けて、飲食を楽しめる「キッチンカー」業界に、異業種からの参入の動きが出てきた。開業資金を抑えられることから、移住者の起業にもつながっている。

 和歌山県田辺市下万呂の鈴木歩さん(33)と夫の秀教さん(35)は、同市秋津町の産直店「紀菜柑」のほか、各地のイベントに出店している。本業は農業で、市内で梅やミカン、野菜を栽培。キッチンカーでは、サツマイモやジャガイモを使ったスイートポテトやフライドポテトなどを販売している。収穫物がない時期には唐揚げなどを提供する。

 店名は「PEASANT KITCHEN SU(ペザント キッチン スー)」。ペザントは、英語で「小さい土地を耕す農民」を意味する。「農業だけだと、出会いは近所や同業者のみ。生産から加工、販売を手掛けて、お客さんに自ら届けたい」と話している。

 田辺市中辺路町を中心に、上富田町のスーパーマーケットなどでも出店している「やきとり よっしー」の金田義明さん(44)と妻の広子さん(38)は大阪府出身。「釣りやキャンプが好きで中辺路に移住した。近所の方たちの人柄や景色が良かった」と即決し、昨年3月に中辺路町に移住した。

 移住前は会社員。自営も飲食業も初めての挑戦で、営業は、キッチンカーの製作や仕入れ先の情報、タレ作りなど地域の協力を得て、昨年8月に始めた。

 商品はももやねぎま、味付け卵など7種。1番人気のももは1度の販売で仕込む量は7~8キロにもなる。下処理や串打ち、仕込みが大変だというが、「会社員時代にはなかった、お客さんの喜ぶ姿を見られることが何よりもうれしい」と笑顔を見せる。

 固定客も増え、最近は完売する日も多くなった。「最初は分からないことだらけで不安だったが、地域の方には感謝の気持ちでいっぱい。居酒屋のない地域でお店の味を届けたい。子どもから高齢者まで楽しみにしてもらえるよう成長したい」と話している。