和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

マグロ養殖に5Gと水中ドローン 近大とドコモが実証実験

実証実験で、死んだ魚に見立てた模型を水中ドローンを使って回収する関係者(和歌山県串本町沖で)
実証実験で、死んだ魚に見立てた模型を水中ドローンを使って回収する関係者(和歌山県串本町沖で)
 「5G」という高速大容量の第5世代移動通信システムと水中ドローンを活用することで、和歌山県串本町大島にある近畿大学水産研究所大島実験場がクロマグロを養殖しているいけす内の映像をリアルタイムで近大東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)に伝送したり、ドローンを遠隔操作したりする実証実験が3月30日にあった。水中作業をするダイバーの負担軽減につながることなどが期待され、今後も検証を重ねて養殖業の効率化を目指すという。

 近大とNTTグループが2020年に締結した「5Gの推進、『スマートシティ・スマートキャンパス』創造に関する包括連携協定」に基づく取り組み。NTTドコモによると、同町の市街地などでは昨年12月下旬から5Gが利用できるようになっている。

 近大によると、いけす内の状態を監視することはマグロの品質や水揚げ量を大きく左右するため、ダイバーが水中に潜っていけすの状態や水質、マグロの健康状態を確認したり、死んだ魚を回収したりしているが、作業者の負担が大きいのが現状という。このため、5Gと水中ドローンを活用することで遠隔地から指示を出したり、ダイバーの作業を代替したりすることで作業の効率化や生産性、安全性の向上が期待できるとして、今回の実証実験に取り組んだ。

 この日は2020年に生まれた全長約80センチ、重さ約10キロのクロマグロを800匹ほど養殖しているいけす内で実証実験に取り組んだ。

 水中ドローンで撮影したいけす内のマグロの映像を5Gを利用することで約130キロ離れた東大阪キャンパスにリアルタイムで伝送したほか、ドローンに取り付けたアームで沈んでいる死んだ魚に見立てた模型も回収。東大阪キャンパス側では、映像を見ながら作業内容や撮影ポイントを指示したり、水中ドローンを遠隔操作したりした。

 東大阪キャンパスから参加した近大水産養殖種苗センター(白浜町)の岡田貴彦センター長は、5Gを活用した映像について「いけすの中をビデオカメラで撮って船の上で見るのとほとんど変わらなかったし、タイムラグも感じなかった」と説明。実験の手応えについて「マグロはデリケートな魚で、水中ドローンにどのような反応をするかに興味があったが、ダイバーが潜るよりもストレスを感じていないことがよく分かったし、死んだ魚の回収についても可能性が見いだせた。今回はいけすの中だったが、いけすを固定しているアンカーロープの点検など、水深が深く危険な場所での活躍も期待できる」と話していた。