和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月21日(土)

コロナ禍にビジネス案続々 田辺市で「塾」修了式

ビジネス案を発表する「未来塾」の6期生(和歌山県田辺市上の山1丁目で)
ビジネス案を発表する「未来塾」の6期生(和歌山県田辺市上の山1丁目で)
木村晃和副市長(手前右)から修了証を受け取るプチ起業塾の2期生=和歌山県田辺市上の山1丁目で
木村晃和副市長(手前右)から修了証を受け取るプチ起業塾の2期生=和歌山県田辺市上の山1丁目で
 和歌山県田辺市の人材育成事業「たなべ未来創造塾」と「たなべプチ起業塾」の修了式が相次いで田辺スポーツパーク多目的ホール(田辺市上の山1丁目)であった。コロナ禍でも新たなコミュニティーの形成や他業種との連携などで、地域課題解決につながるビジネス案が続々と誕生した。

■個性生かし課題解決 未来創造塾

 たなべ未来創造塾の第6期修了式は19日。宿泊業やウェブ制作、小売業などさまざまな職業の塾生12人が、それぞれの個性を生かして地域課題を解決するビジネス案を発表した。

 「未来塾」第6期は昨年7月に開講。受講生は9回の講義で地域の課題や資源、自社の強みの生かし方を学び、3回の演習を通じ、ビジネス案を練り上げた。

 自動車販売・修理業の那須建太さん(36)は、顧客が減少する中、中古車をリサイクルしてリース車やレンタカーとして活用する事業を提案。企業や移住者に低価格、短期契約で利用してもらうほか、観光施設には電動キックボードや電動アシスト自転車をセットで貸し出す。

 那須さんは「受講当初は何をしたらいいか分からなかったが、自社の価値を見直す機会になった。地域の困り事に届くビジネスとして発展させたい」と話した。

 農業会社勤務の田中和広さん(32)は、農業の人手不足を補うため、都市部の若者と地元在住者が一緒に農作業や遊びを楽しむサークルづくりを発案。市外の田辺市出身者による集まりをつくったり、現地に来られなくても販売を支援する協力者をつくったりして「友達の輪」を広げたいという。

 田中さんは「講義を通じ、柔らかなコミュニティーが大切だと学んだこともヒントになった。僕自身が関係人口を通じた移住者で、そうした視点も生かしたい」と話した。

 塾長の真砂充敏市長は「地域課題の解決手法は12人12色で斬新。採算性も高め、ぜひアイデアを実行してほしい」とエールを送った。

■自分らしい一歩 プチ起業塾

 プチ起業塾の第2期修了式は18日。起業や副業を志す10人が、それぞれの趣味や生活スタイルに合ったビジネス案を発表した。

 プチ起業塾は、会社勤務や子育てをしながら、小さな仕事を創る人材の育成が目標。第2期は昨年12月から計4回の講座を通じ、子育て支援とビジネスの関係や先輩起業家の事例などを学んだ。

 結婚を機に神奈川県から移住し、夫の実家で農業を営む中山円美さん(40)は、自分の好きなことを組み合わせることで、苦手な農業を楽しめないかと考えた。写真共有アプリ「インスタグラム」を使って日常を発信したり、紀南の作家とコラボした「みかんアート」を企画したり。農園の働き方も子育て世代に合わせて柔軟にしている。

 中山さんは「塾に参加して、やりたいことをやっていいんだと背中を押してもらえた。発表の練習を通じ、家族の理解も深まった」と話した。

 画家の加藤綾さん(29)は、「伝える技術」を学ぶ絵画教室を発案した。講義形式ではなく、集まる異年齢の子ども同士で絵がどう伝わったか、どうすればより伝わりやすいかを模索したり、絵を通していろいろな教科の知識を身に付けたりできる教室にしたいという。5月から体験教室を始める。

 木村晃和副市長は「小さな起業はターゲットも絞りやすい。発表にもその良さが出ていた。これからがスタート。皆さんが活躍し続けることが、まちの魅力になる」とエールを送った。