和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月16日(土)

ロケット初号機打ち上げ延期 串本、22年末ごろ目指す

2022年末ごろの初打ち上げを目指すとの方針が示されたロケット発射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町田原で)
2022年末ごろの初打ち上げを目指すとの方針が示されたロケット発射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町田原で)
 和歌山県串本町田原に日本初の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」を整備しているスペースワン(東京都)は11日、これまで2021年度中としていた初号機の発射の時期を延期し、22年末ごろを目指すとの方針を明らかにした。関係団体でつくる「スペースポート紀伊周辺地域協議会」(会長・下宏副知事)の臨時総会が同日に串本町内のホテルであり、同社の担当者がロケットや発射場の部品調達にコロナ禍が影響したことなどを説明した。

 協議会は下副知事のほか、串本町と那智勝浦町の両町長、警察署長、消防長、観光協会長、商工会長、交通機関代表者ら21人が会員となって構成。19年10月に発足し、見学場所の整備や想定される渋滞への対策などについて話し合っている。

 臨時総会では、スペースワンの阿部耕三取締役(43)が事業の進捗(しんちょく)状況について報告。管理や発射管制などをする総合司令棟の建物は完成して中で作業をしており、組み立てや人工衛星の搭載などをするロケット組立棟や射点などは工事の最終段階などと説明した。

 目指していた21年度中のロケットの初打ち上げについては「新型コロナウイルスの影響が世界中で表れ、欲しかった部品が届かないなど物流の停滞があり、試験や作業が当初の想定通り進められない事態に直面した。対策を取ってリカバリーしたいと考えたが、民間初の試みということで手探りのこともあり、打ち上げる時期については来年3月までというのは非常に困難な状況になった」などと、コロナ禍の影響で延期を判断したと説明した。

 その上で「楽しみにし、準備をしていただいていた皆さまには、期待に沿えず大変申し訳ない。来年の年末ごろに向けて鋭意取り組んでいきたいと考えている」などと述べ、具体的な時期については状況が整い次第改めて説明することや、地域の宇宙教育や観光などへの支援に取り組みたいとの考えを示した。

 打ち上げ延期の決定を受け、協議会では準備をしてきた事業を再整理し、来年3月の通常総会で諮る方針。下副知事は「延期は残念だが、コロナ禍の状況を考えれば致し方ない。協議会としては引き続き事業を支援し、初打ち上げの成功につなげたい」などと出席者に呼び掛けた。

 総会終了後、阿部取締役は報道陣の取材に対応。発射場は初打ち上げの成功をもって完成とする考えであることや、初号機は国内で製造された人工衛星1機を載せて打ち上げる予定であることなどを説明した。