【PR】ワーケーションを考えると、見えなかった地域の「資源」が見えてくる
ワーケーションという言葉を聞いたことがない人も多いだろう。日本の自治体として初めてワーケーションに取り組んだのは和歌山県だ。しかし、ワーケーションの取り組みは、地域外に発信するにとどまり、地域の人たちにはあまり知られていない。
ワーケーションとはワーク(仕事)とバケーション(休暇)を合わせた造語である。そのため、たびたび「仕事中に休暇をとるなんて」「休暇に仕事を持ち込むなんて」と議論されることもある。しかし、ワーケーションは実のところ、そのどちらでもない。ワーケーションの目的を考えてみれば、その議論は不要なことが分かる。
■地域を訪れる都会の企業の目的
ワーケーションと一口に言っても、目的によってさまざまな形態がある。個人がワーケーションをすることもあるが、特に地域に影響すると考えられるのが企業のワーケーションだ。1990年代には8割が実施していた時期もある社員旅行は年々減少し、コロナ前の2019年には、実施した企業は全体の30%ほどだった(※)。観光地が団体客を誘客することが難しくなっているといえよう。だからこそワーケーションは企業単位で迎え入れられるという点でも取り組む意味があるといえる。
※2019年または2019年度「2020年 社内イベント・社員旅行等に関する調査」169社 産労総合研究所
現在行われる社員旅行は、慰安を目的として宴会などのコンテンツが中心だった以前の旅行とは異なっている。その中心は、コミュニケーションのためのオフサイトミーティングや、チームビルディングのための体験に変化した。しかし、それだけなら遠く離れた地方に足を運ぶ必要もない。わざわざ遠く離れた地方に足を運ぶのは「越境学習」の効果を期待してのことだ。
越境学習とは、普段の職場を離れて、全く異なる環境でさまざまな体験から学ぶことを指す。企業人が求められる資質は、以前のような資格やスキルを得ることにとどまらなくなっている。世界が大きく変化していく中でダイバーシティ(多様性)や地球環境など自分の枠を超えた大きな枠組みを自分ごと化することが求められているが、それらは机上の勉強で得ることはできない。自分の目で見て、また自分がそれを解決してみようと試みることによって、初めて自分ごと化していく。
企業は、社員個人が目的意識を持って仕事に取り組んでもらう姿勢を作ってもらうために越境学習に送り出す。
■これまで資源でなかったものが資源となっていく
観光資源はある程度限られている。他にはないもの、差別化がはかれるものをと思っていても、すぐに見つかるものでもない。ワーケーションはどうだろうか?実は価値を感じてもらえるコンテンツは私たちの身近なところにあふれている。
例えば「梅収穫ワーケーション」。梅の収穫時期の人手不足という課題や、梅産業という資源を用いて、梅の収穫期に多くの企業人が地域を訪れている。農業、それも「梅」の体験となれば、紀南地域が自信をもって提供できるコンテンツだ。
備長炭ワーケーションも人気だ。窯出し体験といった一部を体験するのではない。森を歩き、木のことを学びながら、どう自然を維持していくかを学び、考える。
第一次産業はもちろん、紀南ならではの文化や産業をワーケーションの目線で見れば、さまざまなものが価値を持っていくだろう。
忘れてはいけないのは、ワーケーションで訪れる人は「本物の日常」を求めてやってくるということ。おもてなしをするのではなく、リアルを体験してもらうことが重要だ。ワーケーションをうまく活用することができれば、訪れてもらえる地域づくりというだけでなく、もう一つの故郷と考えてくれる人が増えていく。地域の抱える課題について共有することもできるだろう。
仕事や休暇といった枠に収まることなく、ワーケーションの受け入れは地域にとって意味の大きい取り組みだ。