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安政地震の重要資料も 旧紀州藩領の書籍ネット公開

「中根文庫」について説明し、活用が呼び掛けられた歴史講座(和歌山県串本町串本で)
「中根文庫」について説明し、活用が呼び掛けられた歴史講座(和歌山県串本町串本で)
会場に展示された「中根文庫」を見る参加者
会場に展示された「中根文庫」を見る参加者
 和歌山県の歴史に関する古い文書などの収集や保存、公開に取り組む県立文書館(和歌山市)が今年から、旧古座町助役などを務めた郷土史家・中根七郎(1871~1957)が収集・書写した旧紀州藩領についての書籍「中根文庫」をデジタル化し、インターネット上の「県歴史資料アーカイブ」で公開している。中根文庫を保管している串本古座高校(串本町串本)でこのほど記念の歴史講座があり、専門家が資料の重要性を説明し活用を呼び掛けた。


 文書館によると、中根文庫は、中根が収集・書写した旧紀州藩領の歴史や文化、宗教、災害、動植物などに関する201点の書籍の総称。うち124点は中根が書写したもので、なかには原本が失われ、中根文庫にのみ伝わるものも含まれており、資料として大変貴重。旧古座高校に寄贈され、保管されていた。県立文書館では2018年12月から古文書や行政刊行物、写真・絵図をデジタル化してインターネット上で公開する「県歴史資料アーカイブ」を始めており、中根文庫も今年3月から公開しているという。

 今回の歴史講座は、中根文庫を含む旧古座校舎に保管されていた資料を整理・展示した串本古座高校の資料室「古座高校・古座校舎 百年の青春 はまゆう館」が今年2月に開設されたことと中根文庫のデジタルアーカイブ公開を記念して、同校と文書館が開いた。当初は10月1日の開催を予定していたが、コロナ禍のため今月3日に延期していた。

 約30人が受講した歴史講座では、文書館の砂川佳子副主査がまず中根七郎の履歴や中根文庫について紹介。アーカイブでの公開が始まったことについて「誰でもいつでも資料を見ることができるようになり、郷土史研究の新たな段階に入った」と述べた。

 続いて、玉置將人副主査が地域の産業や観光、南紀熊野ジオパークなどについての学習に、中根文庫の「古座漁業誌」や景勝地を紹介した「昭和十年改作 古座川案内稿」といった資料が活用できると提案。「歴史を知り、地域の現在、未来について考えるために活用いただけたら。学校に残る歴史資料は地域の宝。地域の未来を担う若い世代の地域に対する愛着や誇り、文化を大切にしようという意識を育むことにつながるのではないか」などと呼び掛けた。

 最後に、藤隆宏主任が中根文庫から江戸時代の地震・津波に関する記録を紹介。宝永地震津波(1707年)と安政地震津波(1854年)を中心に四つの資料があることを説明して「安政之大地震」という資料を読みながら解説。「現時点で私たちが把握する限りでは、安政之大地震の内容について現存するもので最も原本に近いものが中根文庫。日本地震研究基礎資料の事実上の原本となっており、この本は非常に重要なもの」などと述べた。

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