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2024年12月19日(木)

「運転卒業証」の取り組み好調 白浜署、高齢者の事故減少も

運転卒業証や記念品を持つ、白浜署交通課の田中康裕巡査部長(和歌山県白浜町で)
運転卒業証や記念品を持つ、白浜署交通課の田中康裕巡査部長(和歌山県白浜町で)
 和歌山県警白浜署は、署で運転免許を自主返納した人に「運転卒業証」を贈る取り組みを続けている。運転に不安がある人の返納を後押しして、高齢者の交通事故を減らすことが目的。2019年4月に取り組みを始めてから免許を返納する人が増え、管内では同年の高齢者による人身事故は減少したという。

 卒業証を考案したのは、同署交通課の田中康裕巡査部長(39)。他府県での取り組みを参考にして、白浜署と串本署では19年4月から卒業証の交付を始めた。署で返納手続きをした人が対象で、県内では初めての取り組みだった。

 卒業証は署長名で「運転者としての責務を無事に果たし卒業されたことを証明する」などと書かれており、一緒に反射材などの交通安全グッズを記念品として贈っている。

 白浜署によると、取り組みを始めた19年4月から12月までに53人が署で免許を返納し、18年中の22人を大幅に上回った。20年に入ってからも、1~11月に41人が返納し、卒業証を受けている。

 また、管内で19年中にあった人身事故30件のうち、65歳以上の高齢ドライバーによる事故は4件。18年中は54件のうち15件だった。田中巡査部長は「直接効果があったかは分からないが、今年は高齢ドライバーによる事故は5件で、引き続き抑止できている」と話す。

 一方で、運転に不安を感じていても生活のために免許の返納が難しい人がいるなど、課題もある。返納した人が料金の割引を受けられるタクシー会社があるが、署は行政にも公共交通機関を利用しやすくなるよう働き掛けているという。

 田中巡査部長は「免許を返して終わりではなく、そこからまた新しい生活が始まる。不安に思いながら車の運転を続けなくても済むように、少しでも免許の返納を後押しできるように、警察でもできることをやっていきたい」と話している。