和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月15日(金)

シイの床材製品化へ 和歌山県林業試験場が乾燥技術確立

ツブラジイを使ったフローリング材(和歌山県上富田町生馬で)
ツブラジイを使ったフローリング材(和歌山県上富田町生馬で)
 和歌山県林業試験場(上富田町)は、資源量が豊富だが、ほとんど利用されていない広葉樹ツブラジイ(別名コジイ、ブナ科)の乾燥技術を確立、フローリング(床)材の製品化に成功した。材質が堅くて傷が付きにくい特徴があり、床材として高いニーズが期待されている。試験場は「まずは公共施設で普及を図っていきたい」と話している。


 県内のシイ類は用材としてほとんど利用されず、低価格な製紙チップやまきなどに使われてきた。試験場では、付加価値を高めるとともに、カシノナガキクイムシの被害に遭いやすい大径木を減らすため、2018年度から研究に取り組んでいる。

 シイ類の生木は含水率100%を超えるほど多くの水分を含んでいる。床材に求められる含水率8%に落とす際、人工乾燥で一気に乾燥させてしまうと収縮や割れ、狂いなどが生じる。このため、天然乾燥と組み合わせた乾燥方法の確立が課題となっていた。

 試験には幅14センチ、厚さ2・4センチ、長さは1・1メートルと2・1メートルのツブラジイを使った。

 天然乾燥で含水率を20%まで落とすのに夏季で約3カ月かかり、40%を下回ると乾燥が緩やかになって効率が悪くなることが分かった。40%までだと秋季でも1カ月余りで達成できた。人工乾燥では、含水率40%のものを38~45度の低温処理することで、品質を落とさずに1カ月弱で仕上がった。

 今のところ、価格的には、無垢(むく)のヒノキより割高になっている。今後、搬出コスト削減や安定供給、歩留まりの向上などの課題をクリアすることで、この価格差を詰めたいとしている。

 また、シイ材は曲がりや虫食いのものもある。長さが一定でない床材を使った乱尺張りにすることで歩留まりを上げていくことができるため、施工方法の提案などもしていきたいという。

 試験場は「とにかく公共施設で使ってもらって、多くの人にもシイ材の良さを知ってもらいたい」と話している。