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2025年04月24日(木)
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【麻布大学】社会的疎外感を抱えつつもウェルビーイングが高い人は、 イヌやネコに心のうちを打ち明けている



麻布大学(学長:村上賢、本部:神奈川県相模原市)獣医学部介在動物学研究室の子安ひかり特任助教、永澤美保教授、菊水健史教授、京都大学医学研究科の村井俊哉教授、東京都医学総合研究所の西田淳志センター長らは、社会的疎外感が高くてもウェルビーイングが高い人は、イヌやネコに対する親密な愛着が高く、心のうちを打ち明けるような関係性を築いていることを明らかにしました。本研究は学術変革領域研究「当事者化」人間行動科学(※):相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解の一環として実施されました。この成果は2025年4月11日Frontiers in Psychologyオンライン版に掲載されました。




〈研究のポイント〉

高校生・大学生を対象に、イヌやネコとの関わり方、社会的疎外感(文化的離反尺度)、およびウェルビーイングについてのアンケートデータを解析しました。文化的離反が高いがウェルビーイングが高い人々は、ペットに対して親密な愛着を示し、重要なことを話したり、心のうちを打ち明けたりする傾向があることを発見しました。自己開示の対象としての伴侶動物が思春期の精神的健康をサポートする可能性を示唆しました。

〈研究成果の概要〉

〇背景
思春期の精神的健康は、その後の人生までにも影響を与える大きな問題です。特に社会や文化との価値観の不一致を経験した若者は生きづらさを感じる傾向にあり、思春期の精神的健康のサポートが重要視されています。
精神的健康をサポートする方法のひとつとして、伴侶動物との関わりが広く認識されつつあります。人と伴侶動物の関係は多様です。時に人は伴侶動物に無条件に受け入れられている感覚を覚えることもあります。このような関係性は、個人が社会との価値観の不一致を認識した際にも、精神的健康への影響を軽減できる可能性があると考えられます。

〇目的
本研究の目的は、思春期におけるイヌやネコとの関わり方が、社会との価値観の不一致とウェルビーイングの関係に与える影響を明らかにすることです。社会との価値観の不一致を測る指標として文化的離反尺度を用い、文化的離反が高い人の中で、ウェルビーイングが高い人と低い人のイヌやネコとの関わり方の違いに着目しました。

〇方法
高校生と大学生を対象に、イヌやネコとの関わり方、文化的離反尺度、ウェルビーイングに関するアンケートデータを解析しました。文化的離反とウェルビーイングの平均値に基づき、対象者を4グループに分類しました。その中で、文化的離反が高い中でウェルビーイングが高いグループと低いグループを比較し、動物観やイヌ・ネコへの愛着の違いを調べました。

〇結果
文化的離反が高くウェルビーイングが高いグループは、文化的離反が高くウェルビーイングが低い群と比較して、
・ イヌやネコに対して高い親密な愛着スコアを示しました。
・ さらに詳細な関わり方を調べたところ、「ペットにいつも大事なことや心のうちを打ち明ける」ことが多くなりました。
・ 動物観においては、環境や野生動物に対する人間中心的な考え方や生態・環境への関心のスコアが高かったです。

〇考察・解説
結論として、マイノリティ感が高くウェルビーイングが高い人は、環境や野生動物に対して人間中心的な考え方をし、生態・環境への関心が高く、イヌやネコに対して親密な愛着を示していることがわかりました。また、大事なことを話したり心のうちを打ち明けたりするような、自己開示の対象として伴侶動物が機能することで、思春期の精神的健康をサポートしている可能性が示されました。
人間中心的な考え方とイヌやネコに対する親密な愛着は一見矛盾しているようにも思えますが、イヌやネコを相談相手とする関わり方は、イヌやネコを自分の投影あるいは延長として扱い、自分の価値観に従って関係を構築しており、人間中心的であると捉えることもできます。ウチである親密な対象のイヌやネコとソトである環境や野生動物に対する態度を明確化し、多面的に動物から利益を得ているのかもしれません。今後、イヌやネコに心のうちを打ち明けることによる個人の心理的、生理的変化を調べる実証的な研究やより詳細な動物観の分析を実施していくことで、イヌやネコがヒトの精神的健康にもたらすサポートのメカニズムの解明が期待できます。

※1 文化的離反(cultural estrangement)とは、個人を取り巻く文化の主流の価値観から自身が離れていると感じる感覚や拒絶されているという感覚を示す(文化的離反尺度の例:「私の世界観は、他のほとんどの人びとのそれと同じように思う」、「私はよく、自分が周りに何となくなじんでいないように感じる」等)
※2 ウェルビーイングは世界保健機関が精神的健康の測定指標として推奨する「WHO-5精神的健康状態表」にて測定した。

〈掲載論文〉
掲載誌:Frontiers in Psychology
DOI: https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1552127
原題:Study on Adolescents' Attitudes and Attachment Toward Companion Animals: Mitigating the Negative Effects of Cultural Estrangement on Well-Being
和訳:思春期の伴侶動物に対する態度や愛着の研究:文化的離反のネガティブな影響を緩衝する
著者名:子安ひかり1、小笠原さくら1、菊水健史1、村井俊哉2、西田淳志3、永澤美保1
1 麻布大学獣医学部動物応用科学科介在動物学研究室
2 京都大学医学研究科
3 東京都医学総合研究所


<参考情報>

(※)文部科学省科学研究費補助金・学術変革領域研究「当事者化」人間行動科学
https://tojishaka.net/

●麻布大学について
麻布大学は、2025年に学園創立135周年を迎えます。動物学分野の研究に重点を置く私立大学として、トップクラスの実績を基盤に新たな人材育成に積極的に取り組んでおり、獣医学部(獣医学科、獣医保健看護学科、動物応用科学科)と生命・環境科学部(臨床検査技術学科、食品生命科学科、環境科学科)の2学部6学科と大学院(獣医学研究科、環境保健学研究科)の教育体制の下、ヒトと動物のよりよき関係をつなぐ専門性の高い人材育成を進めていきます。
麻布大学の概要
https://www.azabu-u.ac.jp/about/






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メール:koho@azabu-u.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/



プレスリリース詳細へ https://digitalpr.jp/r/108154
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