和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年03月30日(日)

【動画】火災に気を付けて 上富田で山林火災想定し訓練、那智大社は全自動放水銃導入、全国予防運動

山林に向けて放水する団員(2日、和歌山県上富田町岡で)
山林に向けて放水する団員(2日、和歌山県上富田町岡で)
全自動の放水銃によって水をかけられる熊野那智大社の本殿(和歌山県那智勝浦町那智山で)
全自動の放水銃によって水をかけられる熊野那智大社の本殿(和歌山県那智勝浦町那智山で)
 春の全国火災予防運動(1~7日)に合わせて、各地の消防本部が広報や啓発活動を通して防火を呼びかけている。和歌山県上富田町では2日、山林火災を想定した訓練があった。岩手県大船渡市で大規模な山林火災が発生する中、参加した消防署員や団員らが真剣な表情で取り組んだ。


 田辺市消防本部上富田分署は2日、上富田町岡の葛原地区で山林火災を想定した訓練をした。町消防団第3分団を中心に23人が参加し、ホースやポンプの使い方などを再確認した。

 団員の連携を強め、的確な消火活動ができるようにと計画した。

 訓練は午前8時ごろ、山林で火災が発生したと想定。出動命令を受けて車両3台で駆け付けた団員が、火元から約400メートル離れた川から水をくみ上げ、放水した。

 水圧の低下を招くというホースの損傷に備え、素早く取り換える訓練もあった。水圧の低下は放水の勢いが弱まって、消火の遅れにつながるという。

 訓練を見守った町消防団の清水功次郎団長は「少しでも早く消火活動に取りかかることで、被害を抑えることができる。今回は放水にかかるまでの時間が、今までの中で一番早かった」と講評した。

■全自動放水銃を導入 熊野那智大社

 那智勝浦町那智山の世界遺産・熊野那智大社(男成洋三宮司)は、国の重要文化財(重文)に指定されている本殿などを火災から守ろうと、全自動の放水銃を新たに整備した。県教育委員会文化遺産課によると、県内の神社仏閣での導入は初とみられる。

 沖縄県の首里城が全焼した火災(2019年10月)をきっかけに、文化庁では特に国宝と世界遺産の重文について集中的に防火対策を推進した。那智大社では文化庁などの補助を受け、世界遺産登録20周年記念事業として本殿防災施設の整備に取り組んだ。

 那智大社にはこれまでも本殿裏側の石垣の上に放水銃を4基設置していたが、いずれも操作は手動。有事の際は職員が駆け付けて石垣を上り、操作しなければならなかった。

 新たに整備した放水銃は全部で7基。炎による空気の揺らぎなどを感知する感知器を各所に計20個設置した。感知器が異変を察知すると、自動でポンプ室や放水銃が動き出し、左右に動きながら本殿などに水をかける仕組みだ。新たに3カ所、消火栓も本殿の裏側に増やした。

 昨年9月から整備に取り組み、このほど完成した。事業費は約1億6千万円で、文化庁のほか、県や町の補助も受けた。

 那智大社では2月28日、竣功(しゅんこう)奉告祭を営んだ。神事を営んだ後、関係者が見守る中で放水をした。

 男成宮司は「火災になると、実際に消防の方々が駆け付けてくれるまでに少なくとも20分ぐらいはかかると思っており、それまでに神社できちっとした初期消火をすることが大変大事。自動で放水ができる装置ができたので、神社を保護していく上で大きなものになる」と話している。