和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

【詳報】検察、元妻に無期求刑 ドン・ファン殺害、弁護側が無罪主張

 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77歳)を殺害したとして、殺人罪などに問われている元妻の須藤早貴被告(28)の論告求刑(第22回)公判が18日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)であり、検察が「本件は殺人事件であり、被告が犯人であることが十分に証明された」と無期懲役を求刑した。弁護側は「怪しいと思わせる証拠がいくつか出てきただけで、犯人とは立証されていない」とし、改めて無罪を主張し、結審した。判決は12月12日に言い渡される。


 起訴状によると、須藤被告は2018年5月24日、殺意を持って、野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ、急性覚醒剤中毒で殺害したとされる。

 公判では、野崎さんが口から覚醒剤を摂取して亡くなったという点に大きな争いはなかった。野崎さんは殺害されたのかと、須藤被告が犯人なのかという2点が最大の争点になった。

 検察側は論告で、野崎さんに覚醒剤を摂取させることができたのは被告以外に考えがたいとし、野崎さんの事故死や自殺は考えられないとも述べた。

 野崎さんの莫大(ばくだい)な遺産を得ようとしたという動機による事件で、計画性が高く、極めて悪質とも指摘した。被告は遺産を取得するために自供できないとして「証拠を見た上で弁解を組み立てていることは明らか」とした。

 公判に証人として出廷した覚醒剤の売人の1人が「本物だった」と証言したことについては「あえて(本物だと)うそをつく理由はない」とし、この証言は信用できるとした。

 一方、弁護側は「薄い灰色をいくら重ねても、黒にはならない」と主張。須藤被告は野崎さんから毎月100万円を約束通りに受け取っており「野崎さんが死んでしまったら(被告は)困る。殺害に及ぶ必要性がない」と述べた。

 覚醒剤については、意思に反して口から摂取させることは困難だとし、具体的な摂取方法が立証されていないと指摘。致死量や味、飲ませ方を須藤被告は調べていないとして、こうした検索履歴の有無が「犯人ではないことを物語っている」と述べた。

 「野崎さんに覚醒剤を買ってくるよう頼まれて注文した」という被告の供述については、野崎さんから受け取ったとする20万円が実際に入金されており「排斥できない」とした。

 公判の最後に、裁判長から発言を促された須藤被告は「ちゃんと証拠を見て判断していただきたいです」と述べた。