和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

地震慌てず避難 世界津波の日で訓練、和歌山

市役所を目指して避難する東陽中学校の生徒(5日、和歌山県田辺市神子浜1丁目で)
市役所を目指して避難する東陽中学校の生徒(5日、和歌山県田辺市神子浜1丁目で)
ライフジャケットを着て高台へ避難する芳養保育所の園児ら(5日、和歌山県田辺市芳養松原2丁目で)
ライフジャケットを着て高台へ避難する芳養保育所の園児ら(5日、和歌山県田辺市芳養松原2丁目で)
東牟婁振興局の訓練で、防災担当以外の職員にも防災関連設備について説明する職員(5日、新宮市で)
東牟婁振興局の訓練で、防災担当以外の職員にも防災関連設備について説明する職員(5日、新宮市で)
 国連が定めた「世界津波の日」の5日、和歌山県内各地で巨大地震を想定した訓練があった。約8万3千人が高台に避難したり、地震が起きた時の安全行動を一斉に取る「シェイクアウト訓練」をしたりした。訓練重点実施期間(10月28日~11月12日)には、被災者の救出や緊急物資輸送の訓練などもあり、計11万人以上が参加を予定している。

■全校生徒で市役所へ
田辺市東陽中

 田辺市の東陽中学校(神子浜1丁目)の全校生徒240人は、高台にある市役所(東山1丁目)まで避難した。市役所への避難は初めて。

 授業中に大地震が発生したと放送があり、生徒は机の下に身を隠した。その後、室内用シューズのまま校舎の外に避難し、速足で高台に向かった。

 全員が到達するまで約10分。2年の山本こたろう君は「スムーズに避難できた。自宅からの避難経路も考えている。飲料水や携帯食を入れた防災バッグを用意している」と話した。

 坂本和也校長は「これまで駐車場などが避難先だったが、防災拠点の市役所に避難できるのは安心」とした上で「南海トラフ地震はいつか確実にやって来る。一人一人が自分で考えて行動し、率先避難者となってほしい」と呼びかけた。

■園児44人が高台へ
芳養保育所

 田辺市芳養松原1丁目の芳養保育所(西口優香園長)でも、大津波警報が発表された場合を想定した避難訓練があった。0~5歳の園児44人が園舎の外に整列した後、近くの高台にある標高27・5メートルの明洋集会所(明洋2丁目)までの約500メートルを、14分ほどで避難した。

 0、1歳児は職員が手で押す避難車に乗り、3歳児以上は頭を守る防災頭巾が付いたライフジャケットを着用して避難した。

 西口園長は「園児が泣いたり怖がったりせず、しっかり避難できて良かった。有事の際は地域の大人の協力が必要になる。積極的に協力を呼びかけたい」と話した。

■担当以外も情報共有
東牟婁振興局

 新宮市の東牟婁振興局も、職員の防災意識を高めるための訓練をした。

 東海・東南海・南海の3連動地震が発生したと想定し、午前10時に庁内放送で緊急地震速報を流した。職員が机の下などに隠れて身を守ったのに続き、防災担当者以外も参加して無線機などの防災関連設備や備蓄飲料水・食料の保管場所を点検したり、庁舎の安全を確認したりした。

 その後、振興局長室で災害対策本部の東牟婁支部の会議を開催。串本町にある串本建設部などともウェブでつなぎ、訓練の内容や初動対応などの情報を共有した。

 地域づくり課の日浦正志地域振興・防災グループ主任は「補い合えるように防災担当以外の職員とも情報を共有して災害に備えたい」と話していた。

 【世界津波の日】 津波の脅威と対策への国際的な意識向上を目的に国連が2015年に制定した。広川町出身の濱口梧陵が安政南海地震の際、稲むらに火をつけることで津波から多くの命を救い、その後、私財を投じて堤防造り村を復旧・復興に導いた故事にちなんでいる。