和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月23日(土)

秋祭りの準備大詰め 日出神社は神船組み立て、熊野三所神社は獅子舞稽古、和歌山

神船を組み立てる氏子たち(10日、和歌山県白浜町日置で)
神船を組み立てる氏子たち(10日、和歌山県白浜町日置で)
例祭に向けて獅子舞を稽古する氏子ら(和歌山県白浜町で)
例祭に向けて獅子舞を稽古する氏子ら(和歌山県白浜町で)
 和歌山県紀南各地の神社で、祭りの準備が大詰めを迎えている。

■神船組み立て 日置の日出神社

 白浜町日置にある日出神社の例祭(13、14日)に向け、氏子たちが10日、祭りで使用する神船(みふね、重さ約1トン、長さ約9メートル)の組み立て作業を始めた。境内の倉庫から船の部品を出し、竹や麻縄を使って組み立てている。3日かけて完成させる。

 みこしを載せる神船は、船首に頭髪を模した房を付け、弓矢、長刀、のろしなどで豪華に飾る。みこしの前には雌雄のお稲荷さんを鎮座させる。

 14日に神事を終えた午前11時ごろ、16人の氏子が神船を担ぎ、獅子舞みこし、子どもみこしと一緒に日置の浜へ出発する。沿道で多くの住民が見守る中、太鼓や笛の音色を響かせながら練り歩く。

 浜に到着後、神船を海に入れ、潮水を掛けて清める。海から上がると、氏子たちは「さし上げた」を意味する「さいたー」というかけ声とともに何度も神船を頭上に持ち上げる。

 江戸時代の寛政年間(1789~1801年)に始まったとされる特色のある祭りだが、地域の人口が減り、高齢化が進む中、維持していくのが年々厳しくなっている。

 日置区長の辻康宏さん(72)は「人の数も経済的にもぎりぎりの状態で祭りを続けている。今後さらに厳しくなっていくと思うので、みんなで意見を出し合って考えていかねばならない」と語った。

 神社総代長の小山康さん(75)は「祭り本番に向け、みんなで協力して準備を進めている。けがなく無事に終えられることを願う」と話した。

■獅子舞の稽古に汗 白浜、熊野三所神社

 白浜町の熊野三所神社で16、17日に営まれる例祭に向け、氏子たちが連夜、獅子舞の稽古に汗を流している。本番が近づき、稽古にも熱が入っている。

 祭りで獅子舞を披露するのは、同神社祭典御船会。20~40代の会員約30人が、9月15日から町内2カ所の会館で稽古をしている。

 三所神社の祭りは300年以上の歴史があると伝わる。150年以上前から続く獅子舞は、「幣の舞」「寝獅子」「剣の舞」「牡丹(ぼたん)の舞」「帯扇の舞」の5演目あり、田植え、稲刈り、豊作祝いといった動きを取り入れた一連の物語になっている。「てんぐ」と「おたふく」がコミカルな動きで獅子をからかう場面や、牡丹の中からあめが落ちてきて、見学している子どもたちが取り合うといった場面もある。

 御船会会長の雑賀弘典さん(41)は「祭りのために地元に就職した」というほどこの祭りを愛している。祖父、父、兄も会長を過去に務めており、本殿で「幣の舞」を収めたこの4人の名前が神社に刻まれている。

 雑賀会長は「会員の平均年齢が上がっていて、体力的にきつくなっている。腰、膝、腕への負担が大きいが、気合と根性で乗り切っている」と笑う。会員同士の絆は強く、祭り後は達成感などから涙を流す会員が多いという。

 父も獅子舞をしていたという真鍋光さん(27)は、高校卒業後から獅子舞を始めた。「毎年祭りの季節を楽しみにしている。見ている人以上に自分が一番楽しんでいる」と話す。

 今夏は南海トラフ地震臨時情報の影響で経済的に大きなダメージを受けた白浜町。会長の兄で御船会顧問の雑賀弥一さん(43)は「祭りで少しでも町を元気づけることができればと思う。たくさんの人に見に来てもらいたい」と語った。