和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月08日(金)

参詣道守る「道普請」 丸15年で4万人近く、世界遺産・熊野古道、和歌山

熊野古道の道普請に取り組む新入社員(和歌山県田辺市本宮町で)
熊野古道の道普請に取り組む新入社員(和歌山県田辺市本宮町で)
道普請の実施件数
道普請の実施件数
 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されている和歌山県の熊野古道などの保全に企業や団体、学校などが取り組む道普請が、今月でスタートから15年を迎えた。6月末までの参加人数は延べ約3万8千人に上り、コロナ禍の影響で減少していた実施件数も以前の状況に戻ってきているという。


 和歌山県の「10万人の参詣道環境保全活動」。雨によって土が流出してしまう熊野古道や高野山町石道などの保全に多くの人の力を借りたいと、世界遺産登録から5年の2009年7月から始めた。団体の要望を聞きながら実施場所を決め、県世界遺産センター(田辺市本宮町)の指導で道普請に取り組む。活動にかかる「土代」などは実施する団体が負担する。

 県観光振興課によると、事業スタートから今年6月末までの実施件数は652件で、参加人数は延べ3万8265人。参加者の47%が企業・団体、21%が学校の活動によるもの。開催場所は、過去5年のデータを見ると、田辺市本宮町が76%と最も多く、高野町が21%で、この2カ所がほとんどだった。

 近年の実施件数は、最も多かった18年度には59件(2519人)だったが、コロナ禍の影響で20年度には15件(330人)に減った。その後は21年度28件(827人)、22年度46件(1676人)、23年度41件(1549人)と戻ってきている。本年度は6月末までに13件(372人)で、今後50件程度に増える見通しという。

 参加する企業や団体では、新入社員らの研修に活用したり、作業に合わせて熊野古道歩きを楽しんだりしているケースも多い。

 川崎市に本社のある建設業「富士古河E&C」は17年度から、社会貢献活動を兼ねた新入社員研修として道普請に取り組んでいる。今年5月中旬、新入社員ら33人が3泊4日の日程で田辺市本宮町を訪れ、2日間にわたって道普請をしたり、古道歩きを体験したりした。

 初日の道普請は伏拝王子近くの熊野古道で実施。約1・5トンの土を次々と土のう袋に詰め、400メートルほど離れた場所に人海戦術で運び入れた。

 作業に汗を流していた新入社員の古川泰成さん(24)は「和歌山県を訪れたのは今回初めて。世界遺産の保全に貢献できるのは誇れることだと思う。改めてプライベートでも歩きに来たい」と笑顔を見せた。

 県観光振興課の担当者は「コロナ禍の影響で激減してしまったが、本年度は再開したいという申し出もあり、前年度より若干増える見込み。参詣道の保全は常に続けていく必要があるので、途絶えることなくこれからもご協力をお願いしたい」と話している。