和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月23日(土)

二酸化硫黄の影響示唆 梅生育不良で専門家が報告

広島大学大学院の佐久川弘教授による梅生育不良についての調査報告を聞く農家や関係者ら(18日、和歌山県田辺市秋津町で)
広島大学大学院の佐久川弘教授による梅生育不良についての調査報告を聞く農家や関係者ら(18日、和歌山県田辺市秋津町で)
 梅の生育不良と大気汚染との関連性を調査する広島大学大学院の佐久川弘教授は18日、和歌山県田辺市で開かれた会議でこれまでの調査結果を報告した。二酸化硫黄が生育不良に関係した可能性を指摘。その上で、現段階では明確な結論を出すことは困難だと説明した。

 田辺市秋津町のJA紀南中央購買センターであった「田辺うめ対策協議会」(会長=山本治夫JA紀南組合長)の総会で報告した。佐久川教授は2017年5月にも協議会の役員会で報告しており、見解は同じだった。

 梅の生育不良は1990年代から2000年代にかけて発生した。大気汚染との関連性が指摘され、関西電力やJA紀南、大学教授らでつくる「梅生育障害対策研究会」が調査したが、明らかになっていない。調査期間が短く、大気汚染の長期的な変動が十分に考慮されていない可能性があるとされ、佐久川教授らが新たな調査を進めてきた。

 これまでの調査では、1994~2019年の長期間にわたる田辺市上芳養での大気汚染物質濃度測定データを解析し、大気汚染の歴史的変遷を明らかにするとともに、生育不良との関連性を解析することを試みた。

 その結果、1990年代から2000年代にかけ、大気汚染濃度は全般的に高く、特に二酸化硫黄と光化学オキシダント(オゾン)濃度が目立ったが、10年代に二酸化硫黄が大幅に減少したのに対し、光化学オキシダントは高い状態が続いているのが分かった。全国的な傾向で、アジア大陸からの汚染が疑われるという。これらを基に、二酸化硫黄が生育不良と何らかの関係がある可能性があるとした。

 しかし、現状では明確な結論は出せず、今後もデータの収集や解析を続け、大気汚染と生育不良の関連性の解明を目指したいという。

■新規発生は最少 本年度の調査結果

 総会では、本年度に実施した梅の生育不良の実態調査結果も公表された。新規発生本数は792本で、これまでの調査で最も少なかった。

 調査は、梅の立ち枯れの状況を把握するため、1991年度から農家にアンケートする形で毎年続けている。本年度は7月に田辺市内の梅農家1800戸に配布し、9月末までに893戸から回答を得た。回収率は49・6%で、今回も低かった。

 本年度の新規発生792本は、2018年度より187本少なく、これまでで最も少ない16年度の920本と比べても100本以上減っている。しかし、回答数が少ないのも影響しているという。

 新規の発生は1996年度から2000年度にかけては毎年度1万本を超えていたが、01年度以降は減少傾向で10年度からは千本台となり、16年度に初めて千本を割った。

 地区別には例年同様、園地が多いこともあり三栖、上芳養、稲成、秋津川で多発したが、上芳養や上秋津で大幅に減った。

 調査とは別に、農家らが生育不良との因果関係に注目する関西電力の御坊発電所(御坊市)の稼働率についても報告した。本年度は9月までの平均が1・2%で、1984年度以降の年別で比較すると最も低かった。