和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月24日(日)

「避難所の状況に衝撃」 能登地震で日赤和歌山の医師、衛生環境悪く物資足りず

避難所サポートセンターとなった市立輪島病院で救護班などの指揮を執る中大輔医師(手前)=石川県輪島市で、日赤和歌山医療センター提供
避難所サポートセンターとなった市立輪島病院で救護班などの指揮を執る中大輔医師(手前)=石川県輪島市で、日赤和歌山医療センター提供
能登半島地震被災地の避難所の様子や運営の課題などを話す日赤和歌山医療センターの中大輔医師(左)と芝田里花看護師=和歌山市で
能登半島地震被災地の避難所の様子や運営の課題などを話す日赤和歌山医療センターの中大輔医師(左)と芝田里花看護師=和歌山市で
 能登半島地震で被災した石川県輪島市で、避難者の健康管理や避難所の衛生環境整備の指揮を執った日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山市)院長補佐の中大輔医師(59)が12日、会見した。衛生状況が悪く、物資が足りず、介護が必要な高齢者が多い避難所の状況に「衝撃を受けた」と言い、和歌山でも対策を強化する必要があると訴えた。

 日赤の「災害医療コーディネーター」である中医師は「コーディネータースタッフ」で看護師の芝田里花・看護副部長(60)ら3人と、4~9日の日程で派遣された。病院や市役所を拠点に、日赤救護班や災害派遣医療チーム(DMAT)など、全国のさまざまな組織から集まった約80人の医師や看護師らを指揮し、避難所や道路、天気などの情報を収集、問題点を整理し、指示したり、自ら助言に赴いたりした。

 中医師はこれまでもさまざまな災害現場で活動の経験があるが、今回の現場は「混沌(こんとん)とした世界」で、ほとんど情報がない状態だったという。指定避難所ではない、個人の駐車場やビニールハウスなども含め、市内では170カ所以上の避難所があることを調べ上げ、うち70カ所を担当した。

 輪島市の高齢化率は46・3%で、芝田看護師によると、避難所では1部屋に介護が必要な高齢者が何人も床の毛布に寝ていて、その場でおむつ交換をしていた。避難者が介護や避難所運営をしており、疲弊しストレスがたまっているとした。避難後に歩けなくなったなどといった「生活不活発病」になったり「認知症」が悪化したりした人もいるといい、芝田看護師は「非常に過酷な生活をされていた」と話した。

 避難所では、トイレの水が流せない、室内を土足で歩く、厳しい寒さや多い避難者で「3密」になっているほか、段ボールベッドやマスク、アルコール製剤がないなど感染防止対策が取れない状況。ノロウイルスのクラスターが発生しており、新型コロナウイルスやインフルエンザの感染者増も懸念されるという。

 中医師は、地震発生が正月だったため、行政職員が避難所に入るのが遅れた事情もあるとした上で「高齢者が感染すれば災害関連死が増える」と懸念を示した。段ボールベッドは必需品だが、輪島市では1週間たってもほとんど確保されなかったといい、食料などと合わせて地域ごとに備蓄し、すぐに避難所に運べるような態勢をつくっておくべきだとした。

 中医師は「高齢化率を考えたとき、和歌山でも同じ惨状になることは間違いないと確信した。少しでも和らげるために、現場を見て来た救護班と行政が具体的に案を出し合いたい。医療行政は新型コロナから、災害医療にもう一度目を向けてほしい」と訴えた。