和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月21日(木)

自生のサクラも警戒必要 梅の木荒らすカミキリ

樹木を食害するクビアカツヤカミキリの幼虫(写真はいずれも県林業試験場提供)
樹木を食害するクビアカツヤカミキリの幼虫(写真はいずれも県林業試験場提供)
クビアカツヤカミキリの成虫
クビアカツヤカミキリの成虫
 県林業試験場(上富田町)と森林総合研究所(茨城県つくば市)は、梅などバラ科の樹木に被害を及ぼす特定外来生物クビアカツヤカミキリの幼虫が、自生するサクラなどでも成長することを突き止めた。隣接府県で被害が出ており、試験場は「山地に自生するどの樹木が、幼虫の宿主として適合するかを解明し、被害防止に役立てたい」と話している。


 試験はサクラ属を中心としたバラ科16樹種を使い、ふ化直後の幼虫をそれぞれの切枝(長さ18センチ)に接種した。最も発育したのはバクチノキとオオヤマザクラで、ビワは発育が非常に悪かった。ただ、紀南に自生するクマノザクラやオオシマザクラなどは、全国的に最も被害が多く繁殖が確認されているソメイヨシノと同じぐらいの発育だった。幼虫の生存率はいずれも68~96%と高かった。

 試験場の法眼利幸研究員は「新種のクマノザクラで普通に発育することから、今後、被害に遭う可能性がある。このサクラが分布する山地への侵入を防ぐためには早期発見が重要」としている。

県内確認は17年のみ
かつらぎで成虫

 対策として、県は市町やJAと連携し、2018年から6~8月に月1回のペースで、梅やスモモ、モモなどの園地近くのサクラ類をモニタリング調査している。19年は17市町で実施した。いまのところ、17年7月にかつらぎ町で成虫1匹が初めて確認された以外は、県内で成虫、幼虫のほか、フラス(幼虫のふんと木くず)も見つかっていない。

 県かき・もも研究所(紀の川市)は「隣接府県すべてで被害が確認されており、県内でいつ出てもおかしくない状態」と警戒している。


 クビアカツヤカミキリ 体長約3~4センチ。全体が黒色で首の部分が赤いのが特徴。中国やロシア、ベトナムなど亜寒帯から亜熱帯に至る非常に広い地域に分布している。日本では2011年に埼玉県で成虫が初めて採集され、その後全国各地で見つかっている。被害樹種はソメイヨシノや梅、モモ、スモモで、このほかにもオオシマザクラやシダレザクラで被害が見られている。