和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月26日(火)

「里海」を守り、生かそう 和歌山・田辺市の新庄漁協、自然共生サイト認定目指す

神島を望む田辺湾の海域(和歌山県田辺市新庄町で)
神島を望む田辺湾の海域(和歌山県田辺市新庄町で)
新庄海域のアマモ場(ヒロメラボ提供)
新庄海域のアマモ場(ヒロメラボ提供)
 和歌山県田辺市の新庄漁協(橘智史組合長)は、新庄周辺海域の「自然共生サイト」認定を目指し、自然環境の調査と保全、エコツアーの開発に取り組む。「サイト」は民間の取り組みで生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する制度。里海を守り、生かすことにつなげたいという。

 国は2030年までに、陸、海の少なくとも30%を保全する目標を掲げている。しかし、国が法律で定める国立公園などの保護地域は、地権者との絡みもあり、容易には増やせない。そこで、環境省は基準を満たした企業の森や里山、農地、社寺林などを「サイト」に認定し、生物多様性の保持を促そうとしている。

 新庄漁協の取り組みは、昨年度に続き、環境省の「令和の里海づくり」モデル事業に選ばれている。昨年度は海藻ヒロメの種苗生産や養殖試験などが中心だったが、ヒロメは生育期間が2~4月と短い。本年度はヒロメ以外の自然資源を把握し、年間を通じて実施できるエコツアーや漁業体験の開発を目指す。

 新庄周辺海域には海藻ホンダワラ類のガラモ場が広がっているほか、海草のアマモ場、サンゴイソギンチャクの群生地がある。天然記念物の神島やカモの越冬地、周辺には環境省が生物多様性の情報を継続的に収集する「モニタリングサイト1000」に登録されている干潟、田畑に囲まれた里山もある。

 里海を活用したツアーでは、磯、砂浜、干潟、アマモ場などでの自然観察会、地先での漁業や養殖の見学や体験会、保全活動の体験などを想定している。自然観察の際に持ち歩ける小冊子も作る。

 研究所「ヒロメラボ」(田辺市神島台)代表で、モデル事業の事務局を務める山西秀明さんは「人の営みとともに、自然の多様性が守られている里海の魅力をもっと知ってもらいたい。自然共生サイトに認定されれば、漁業やエコツアーの付加価値にもなる」と期待している。

■26日に里海シンポ

 新庄漁協主催の「里海シンポジウム」が26日午後2時~4時半、田辺市上の山1丁目の田辺スポーツパーク多目的ホールである。環境省の担当者らが里海、自然共生サイト、吉野熊野国立公園などについて解説するほか、山西さんが新庄の里海づくりについて話す。参加は無料。

 問い合わせはヒロメラボ(080・6921・4745)へ。