和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年10月05日(土)

「トンボの楽園」よみがえる  田辺・天神崎の湿地で環境改善

くいに止まって縄張りを主張するヨツボシトンボ(和歌山県田辺市天神崎で)
くいに止まって縄張りを主張するヨツボシトンボ(和歌山県田辺市天神崎で)
 和歌山県田辺市天神崎の湿地で、トンボの楽園が復活しつつある。希少なトンボ「ヨツボシトンボ」の飛来も確認された。管理する天神崎の自然を大切にする会は「昨年から湿地の再生に取り組んできた。徐々に環境が戻ってきているのだろう。これからさらに種類が増えればうれしい」と期待している。


 この湿地にはかつて、ヨツボシトンボをはじめ、さまざまなトンボ類が生息していた。しかし、十数年前の大雨で池の堤が崩壊。その後、水がたまらなくなって乾燥化が進みトンボ類は激減した。

 大切にする会の理事が昨春から、環境省の許可を得て水の出入り口を補修し、水がたまるようにした。ボランティアらが維持管理を続けている。

 同年からトンボ類が増え始め、シオカラトンボやオオシオカラトンボ、ハラビロトンボ、ショウジョウトンボ、ギンヤンマ、マルタンヤンマ、アオモンイトトンボが少しずつ復活。今年はそれに加え、ヨツボシトンボやキイトトンボが確認された。

 ヨツボシトンボは、体長4、5センチほどで、ややずんぐりとしている。黄色と褐色を基調とした体色で、各羽に二つずつの斑紋がある。天神崎では、くいや草の先端に止まって縄張りを主張。その周囲をパトロールしたり、他のトンボを追い払ったりする姿が見られている。

 県立自然博物館によると、ヨツボシトンボは個体数が少なく、抽水植物が繁茂した水の枯れない止水域に生息する。このため、県内での分布は局所的でほとんど人目に付くことはないという。

 理事は「近年、紀南地方でも乾田化が進み、田園環境にすむ生物が減ってきている。ここの湿地ではそういった生き物が戻りつつあり、散歩がてら観察してほしい」と呼びかけている。